気候変動は人為的なもの? – 17世紀の小氷河期をもたらした要因とは?

 氷河期―――

 というと、なんだかマンモスがのそのそ歩いている姿を想像するが、実は、気候学上は現在も氷河期なのだ。

 氷河期というのは、大陸規模の氷床(continental glacier)がある時代のことを言う。現在も、北極、南極大陸、グリーンランドに氷床が存在しているので、現代も氷河期に区分されている。
 この現在の氷河期は、地球史上5回目にあたり、250万年前に始まったとされている。氷河期の間にも、寒冷な時期と温暖な時期を繰り返していて、寒冷な時期を氷期、温暖な時期を間氷期と呼ぶ。現在は間氷期で、約11700年前より始まった。

 現在、地球の気候変動が深刻な問題となっているが、有史時代以降も大規模な気候変動が何度か起きていることが分かっている。

 有名なものは「小氷期」と呼ばれる時代で14世紀半ばから19世紀半ばまでで、特に1600年代が寒冷な時代だったと考えられている。ヨーロッパでも日本でも飢饉の多かった時代だ。
 この小氷期の原因は、太陽活動説、火山活動説など、さまざまな説が唱えられているが、いまだにはっきりしたことは分かっていない。

 しかし、この原因に対して、新たな説が登場した。
 それが、なんと、南北米大陸での原住民の虐殺が原因というものだ。

 南米と中米、北米大陸を植民地化した欧州からの移民は、100年あまりの間におよそ5600万人の先住民を殺害した。そのために広大な農地が放棄され、森林に戻った。

 研究チームの推定によると、これによって増えた森林地帯は、フランスの国土面積に匹敵する。結果として大気中の二酸化炭素(CO2)が激減したことにより、1610年までに地球の寒冷化が進んだ。

 UCLのマーク・マスリン教授は、「この時までCO2と気候は比較的安定していた」「地球の温室効果ガスが大きく変動したのはこの時が初めてだった」と解説する。

 小氷河期と呼ばれる1600年代の寒冷期は、自然現象に起因するとの説も発表されている。

 しかしUCLの研究チームは考古学的証拠や歴史上の統計、南極の氷に含まれる炭素の分析などにより、欧州からの植民を原因とする森林の増大が、地球寒冷化の決定的な要因だったと結論付けた。

CNN.co.jp

かつての地球を覆った小氷河期は、アメリカ大陸を植民地化した欧州からの移民が、先住民を大量虐殺したことが原因だった――。英…

 この記事では、5600万人の殺害が指摘されているが、ヨーロッパから持ち込まれた疫病による死者は、一説では1億1千万人とも言われていて、16世紀以降、アメリカ大陸は、急激な人口減少に見舞われている。
 工業化以前の人類の主な活動が、農耕と狩猟だったことを考えれば、気候変動に最も影響を与えるものが人口の減少であるという説には非常に説得力がある。

 今回の研究発表では、過去の気候変動も人為的なものだった可能性を指摘している。
 現代の地球温暖化が、太陽活動や地殻変動などの自然現象によるものではなく、工業化による人為的なものであることは、現在でははっきりしている。この小氷期に関する研究結果は、まだ多くの支持を集めているわけではないが、工業化以前の時代においても、人為的活動が地球環境に対して多大な影響を与えていたとなると、気候変動に関する議論にまた一石を投じることになりそうだ。

 今後の研究成果次第では、人類史だけでなく、地球の生態学にも大きな視点の変更を迫ることになるかもしれない。