【不思議な日本語】新年の抱負 – なぜ「負け」を「抱く」って言うの?

「今年こそは、職場に辞表叩きつけて、起業してやるっ!」

 新年が明けましたな。新年の初めには、大きな目標を掲げるのが吉ってもんです。新年の抱負ってやつですな。

 が。

 最初っから、気負い過ぎて大きすぎる目標を掲げても、そう、うまくいもんじゃぁ、ありません。じゃぁかといって、みみっちい目標を掲げても新年にふさわしくない。

 なかなかむずかしいもんですな。

 年の瀬に振り返って、新年に掲げた目標が実現できたことなんて、私なんざぁ全然ありません。

 そりゃぁ、「負けを抱く」っていうんだから、はじめっから、うまくいくはずはねぇんだよ、なんて戯言まで言われる始末。

 だが、はじめっから、あきらめちゃぁいけません。初心貫徹。

 しかし、この「抱負」ってぇ言葉。不思議な言い方をするもんですな。確かに、「負けを抱く」と言われちゃぁ、立つ瀬がねえ。

 だが、漢字の本来の意味を知れば、そんな世迷言は二度と言えなくなるでしょうな。そこで今回はそれを説明いたしましょう。

抱負の意味と由来

「抱」と「負」それぞれ漢和辞典で調べてみると。。。

【抱】
 形声。手と、音符包とから成る。手でかかえる、「いだく」意を表す。
漢字ペディア

【負】
 会意。貝と、人とから成る。財産を人が守ることから、「おう」「たのむ」意を表す。
漢字ペディア

 「包」は、胎児の象形で包み込まれている様子を表したもの。それに手偏を加えて、「抱く」という意味になったんだそうな。

 一方、「負」は、「人」が「貝」を背負っている姿を表したもの。太古の昔は、貝が貨幣として使われていたわけで。それで「貝」は財産や貨幣を表しているってわけですな。
 つまり、「負」という字の本来の語義は、財産などの責任を「負う」という意味。また、財産を後ろ盾とすることから、「頼む」という意味にもなりました。

背負う
責任を負う
自負する(自らを頼む)

 などの使い方は、この語義から来ているわけですな。

 だが、こっからが、人の想像力の面白いところ。

 人が財産を背負っている姿から、どういうわけか「財産に背を向けている」って意味にだんだん捉えられていくんですな。

 元の意味とは逆の解釈が生まれて、背を向ける、背く、逃れるといった意味が派生していった。こっから「負ける」という使われ方が生じたんでしょうな、おそらく。

 てなわけで、「負」という漢字には、本来の「負う」という意味と「負ける」という大きく二つの意味の意味があるってことですな。

 で。

 ようやくここで本題の「抱負」。

 抱負の「負」の字は、本来の語義から、自分の意志や思いを「抱く」「負う」という意味でつかっているわけです。

 これで、「抱負」って言葉が「負けを抱く」なんて、決して縁起の悪い言葉じゃないってことがはっきりしました。

 こうして改めて「負」って字を調べてみると面白いことがわかるもんですな。

 どうも「負」って字は、「負ける」ってぇ意味が最初に浮かんでしまって、いい印象がねぇ。しかし、元は財産や責任を「負う」ってぇ、立派な意味だ。そう言われてみれば、いろんな熟語で使うなぁ。

背負う …「負担」「負債」「負荷」
身に受ける …「負傷」
負ける …「勝負」「負い目」

 意外といろんな意味でつかってますな。

 が。「背負う」から「背ける」ってぇ意味に変わったとすると、こりゃぁ正反対の意味ですな。

 そりゃぁどおりで、私なんか毎年、年明けに新年の抱負を語っても、年の瀬の頃には、いつの間にか意味が変わって、「負けを抱く」ことになっちゃってるわけで。

 今年こそは、新年の志を貫きたいもんですな。




 。。。ムリかな。