皮膚科の外用薬?ドーピングの違反薬物?ステロイドとは一体何か?

ステロイドとは?ステロイドホルモンについて

 薬に関してよく聞く名前である「ステロイド」。
 ステロイドとは一体何でしょうか?

 ドーピングの違反薬物に「ステロイド」と呼ばれるものがあり、ニュースなどでその名前を聞いたことがある方は多いかと思います。また、皮膚科で「ステロイド」と呼ばれる薬剤を処方された方もいるのではないでしょうか。
 名前がよく知られていて、認知度が高い一方、正しい理解はそれほど広がっていないのではないでしょうか?
 なんとなく「危険なもの」という漠然とした理解をされている方も多いかもしれません。
 ステロイドに関する誤解や間違った認識をなくし、正しく理解するために、この記事ではステロイドホルモンについて解説していきます。

 ステロイドとは、ホルモンの分子構造の種類の一つのことを言います。そのためステロイドを理解するためにまずはホルモンについて知る必要があります。
 まずは、ホルモンについての解説から始めましょう。

ホルモンとは

 ホルモンとは、人の体内で作られる生理活性物質のことで、体内の内部環境を維持、調節するための重要な枠割を果たします。内分泌器官と呼ばれる組織によって合成され、その多くが血液中に分泌されて、血液を通して体全体に循環します。現在100種類以上のホルモンが発見されています。
 ホルモンを生成する代表的な内分泌器官には以下のようなものがあります。

【内分泌器官】
・視床下部
・下垂体
・甲状腺
・副腎(副腎髄質・副腎皮質)
・膵臓
・卵巣
・精巣

 ホルモンには様々な種類があり、それぞれの内分泌器官によって異なるホルモンが生成されています。主な内分泌器官とそれが生成する代表的なホルモン、そしてそのホルモンの主な働きを以下に上げてみましょう。

内分泌器官ホルモン働き
下垂体オキシトシン子宮収縮、母乳分泌
甲状腺甲状腺ホルモン(チロキシン・トリヨードチロニン)新陳代謝促進、自律神経調節
膵臓インスリン血糖値調整
副腎髄質アドレナリン・ノルアドレナリン交感神経亢進
副腎皮質コルチゾール抗炎症
卵巣エストロゲン女性ホルモン、第二次性徴促進
精巣テストステロン男性ホルモン、第二次性徴促進

 ホルモンは、その分子構造によって3つに分類することができます。

【化学構造】
・ペプチドホルモン
・アミン / アミノ酸
・ステロイドホルモン

 分子構造においてステロイド骨格を持つホルモンが、ステロイドホルモンと呼ばれるものです。
 ステロイドホルモンに分類されるものには、以下のものがあります。

【ステロイドホルモン】
・コルチゾール(副腎皮質ホルモン)
・テストステロン(男性ホルモン)
・エストロゲン(女性ホルモン)

ステロイド剤

 ホルモンは薬として広く利用されています。
 その中でも、ステロイドホルモンの成分を配合した薬剤を一般的にステロイド剤と言います。
 しかし、ひとことでステロイドと言っても、ステロイドホルモンにはいくつもの種類があり、その働きはそれぞれ全く異なります。
 ステロイド剤においても、どのホルモンの成分を配合しているかによって、その使用目的も効能も全く異なります。こうした全く異なるステロイド系の薬剤がすべて「ステロイド剤」と簡略化されて一般に呼ばれていることが、ステロイドという言葉を誤解させ、正しい理解が進まない原因となっているのではないでしょうか。
 では、代表的なステロイド剤にはどのようなものがあるのか見ていきましょう。

ステロイド外用薬
 副腎皮質ホルモンのコルチゾール成分を配合した抗炎症薬。
 皮膚の炎症を抑える働きがあり、皮膚科において広く処方されている。
 臨床での知見も豊富であり、医師の適切な指導の下で使用すれば、副作用の心配もほとんどない。

アナボリックステロイド
 男性ホルモンであるテストステロンやそれと類似する効果を持つアンドロゲンを配合した筋肉増強剤。
 医療目的以外での使用が社会問題化している。オリンピックをはじめとする多くのスポーツの現場では、禁止薬物に指定されている。
 副作用が激しく、深刻な腎機能障害や心疾患を引き起こし、死亡事例も後を絶たない。

 このように同じステロイド剤といっても全く異なるものです。ステロイドとはホルモンを構造によって分類した際の一つであって、その中にはさまざまなホルモンが含まれています。そのことを知っておくと「ステロイド」という言葉の誤解や混乱は避けることができるでしょう。