人為的に引き起こされた森林火災
2019年1月以降のアマゾンの大規模森林火災は、なぜ起きたのか。
それは、人為的に引き起こされたもの、というのが多くの専門家の意見だ。特に、ブラジルのボルソナロ大統領によるアマゾン流域の開発政策が大きく影響しているとみられる。
ブラジル大統領ボルソナロの責任
2018年10月のブラジル大統領選で、極右政党の社会自由党に所属する元軍人のジャイル・ボルソナロ下院議員が大差をつけて勝利した。
ブラジルでは、2003年から2016年の13年間、左派の労働者党が政権を担ってきた。極右政党出身のボルソナロ大統領の誕生は、ブラジルの政策に大きな方向転換をもたらすことになった。
彼は、地球温暖化に関して、極めて懐疑的な態度をとっている。2015年に地球温暖化防止に関して結ばれたパリ条約からの離脱を示唆。大統領選の最大の公約に、アマゾン地域の大規模開発を掲げた。
就任以降は、環境保護関連の政府予算を削減。環境保護団体への補助金や違法伐採を取り締まる予算が削られた。ボルソナロ政権は、環境保護よりも開発を優先し、積極的なアマゾン川流域の開発を進め、過剰な森林伐採を行ってきた。また、牧草地や農地拡大のために野焼きを奨励した。
結果、人為的に引き起こされた火災は、政府の制御できる範囲をはるかに超え、8月には南米全土へと延焼が拡大してしまった。
繰り返される暴言と自己正当化──大統領としての資質を欠いたボルソナロ
ブラジル国立宇宙研究所 (INPE) は7月と6月の2ヶ月間で、アマゾンでの森林減少が前年同月比で88%増加したと発表。この発表に対し、ボルソナロ大統領は、虚偽の発表によって政府に損害を与えていると激しく非難。INPE所長を、なんと解雇した。
さらに国際的な非難に対しては、火災はNGOなど環境保護団体がボルソナロ政権を陥れるための陰謀だと主張。環境保護主義者による放火の可能性があると述べた。
「断定はしないが、私や政府への反発を招こうとするNGO関係者の仕業とみられる」
「私の直感は、誰かが撮影のために現場に行き、着火したことを指し示している」
(jiji.com 2019年8月22日)
根拠も挙げないまま(なんと直感!によって)、真偽不明な陰謀論を主張した。
このほかにも、ボルソナロ大統領による妄言、暴言は後を絶たない。
ボルソナロ大統領の森林火災対応を非難したノルウェー政府に対して。。。
「アマゾン基金の40%は環境主義者たちの避難所となっている非政府組織(NGO)に使われている。ノルウェーが支援している、クジラの殺害を見ろ」
と、Twitterに投稿。捕鯨によって血に赤く染まった海の様子を写した動画を紹介した。
しかし、この動画は、デンマークのもので、ノルウェーは関係がなかった。
環境保護に関して記者から問われた際には。。。
「(環境のためには)少し食べるのを控え、大便を毎日ではなく1日置きにとどめるだけでいい。そうすれば生活もずっと良くなる」
(jiji.com 2019年8月10日)
と解答!
G7でアマゾン森林火災を主要課題とすべきだと主張したフランス大統領マクロンに対し、「見当違いの植民地主義」と非難し、主権侵害と主張した。
「アマゾンの問題を、その地域の国抜きでG7で協議するというフランスの大統領の対案は、誤った植民地主義的な思考を想起させるもので、21世紀にふさわしくない」
ボルソナロ大統領は、G7の提言を主権侵害と非難する一方、自国だけでは対応できないことを認めた上で、ブラジル政府には火災に対応する手段を持っていないと開き直った。
さらに非難の矛先は、マクロン個人にまで及び、マクロン夫人を揶揄する発言まで飛び出した。
ボルソナロ大統領には、火災関連以外にも、女性蔑視や人種差別的なさまざまな不適切発言がある。日本人に対する侮蔑的な発言も過去に行っている。
ほとんど人格破綻者で、とても大統領職にふさわし人物とは思えない。トランプ気取りで放言を繰り返しているのだろうが、まだ経済、外交ともに何の実績もあげていない。国外からの非難を口汚く言い返す姿は、国内受けはいいのかもしれないが、国際的な信用を著しく損なっている。
G7支援拒否と国際的孤立──ブラジル森林火災が突きつけた環境外交の限界
2019年8月24日から2日間、フランスで開催されたG7サミットでは、アマゾンの大規模森林火災への緊急対策として、ブラジル政府に対し、参加各国から総額2,200万ドル(約23億3,000万円)の支援金を拠出することが合意された。
しかし、ブラジル政府はこの支援を拒否。ボルソナロ大統領は、「ブラジルを植民地か無人地帯のように扱っている」と反発し、主権の侵害であるとしてG7の提案を拒絶した。この姿勢は、環境問題に対する国際協調への明確な拒否として受け止められた。
ブラジル政府の強硬な態度に対し、欧州諸国の反発は強まり、事実上の経済制裁も議論され始めている。EUは、同年6月にブラジルを含む南米4カ国の関税同盟「メルコスル」と合意した自由貿易協定(FTA)の見直しを示唆。さらに、環境保護の観点からブラジル産牛肉の輸入禁止も検討されている。
民間レベルでも、ボイコットの動きが広がっている。欧米の衣料・靴メーカーの間では、ブラジル産の皮革製品の発注停止が相次ぎ、ブラジル経済への圧力が強まりつつある。
今回の事例は、一国の経済活動が地球規模の環境に与える影響がいかに大きいかを示す象徴的な出来事である。同時に、ボルソナロ大統領がパリ協定を軽視し、G7の勧告を拒絶したことは、環境問題に関する国際的な合意や協調の枠組みの脆弱さを露呈させた。
このような事態を受けて、今後は温室効果ガスの排出や森林破壊、原子力開発など、環境への負荷が高い経済活動に対して、経済制裁を含む強固な国際的なルールの構築が不可欠であることが、改めて浮き彫りになっている。
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