クリス・ギレボー『1万円起業』(2013)
起業することに資金は要らない
原書は2012年の出版。
前回の記事で紹介した「身の丈起業」に近い考え方で、起業をもっと身近なものとして捉えようという本。
従来、起業といえば、資金を集め、登記などの手続きを行い、人を雇って開業し、そのうえで大きなリスクを背負う——といった印象が一般的だった。
しかし、本書を読むと、そのような発想を逆転させて考えることの重要性がよく伝わってくる。
まず、自分にできること、あるいは自分の手の届く範囲で何かを提供してみる。
それが誰かに喜ばれれば、それだけで事業のきっかけとしては十分だ。
それを少しずつ広げていけば、もう事業の始まりである。資金も事業計画書も必要ない。
大切なのは、「今の自分に何が提供できるのか」を考えることだ。
ヒントは日常の中にあふれている。その意味でも、起業の第一歩として、日常の「気づき」を大切にすることが重要だろう。
始めることより続けることの難しさ
起業は、著者の言うように、身の丈から始めて、もっと気楽に考えていくべきだと思う。
ただ、こうした「1万円企業」「身の丈企業」「micro business」の最大の問題点は、参入障壁が非常に低いということだ。
誰でも始められるということは、裏を返せば誰でも真似できるということでもある。そのため、他と明確に差別化できなければ、始めることはできても、それを継続するのは難しい。
本書では、いくつかの事業事例が紹介されているが、それを始めるまでの過程や、続けていく上での困難についてはほとんど触れられていない。継続していくためには、本書では描かれていない多くの努力や工夫が求められるはずだ。
とはいえ、これから起業を考えている人にとって、本書で紹介されているmicro businessの事例は非常に刺激的だ。新しい一歩を踏み出すきっかけとしては、十分に価値があるだろう。
これから、個人の創意工夫を活かしたさまざまな事業がたくさん生まれてくれば、世の中もっと面白くなっていく!んじゃないかな。
クリス・ギレボー『1万円起業』(2013)
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