ホワイト国からの除外
2019年7月1日、日本の経済産業省は「大韓民国向け輸出管理の運用の見直し」を発表し、韓国へのフッ化ポリイミド、レジスト、フッ化水素など半導体関連3品目を対象に、「包括許可」を廃止し、いずれも個別審査(最大90日)の対象とする措置を開始した。同時に、「ホワイト国」(厳格な輸出管理体制を維持している国)としての韓国の扱いを外す政令改正手続きを開始。
そして、8月2日には閣議決定された。
なぜ韓国が対象に?
1. 「信頼関係」の著しい損失を理由に
日本政府は、韓国との輸出管理制度に関わる意見交換の場(例:「戦略物資会議」)が2016年以降開かれず、制度改善も不十分だったとして、「信頼関係が著しく損なわれた」と明記。さらに、韓国側で「不適切な事案」が実際に発生したことも除外の理由とされた。
2. 韓国最高裁による徴用工判決の影響
2018年後半、韓国最高裁が日本企業に対し、戦時中の徴用労働者に賠償命令を出したことで、日韓間の政策的対立が深刻化。日本はこれも背景要因の一つとして意識しており、「友好協力関係に反する動きが相次いだ」としている。
3. 安全保障上の懸念を前面に
「ホワイト国」からの除外は報復措置ではなく、安全保障上の措置と説明。韓国の輸出管理制度が不十分で、戦略物資が意図せず流出する懸念があるとされた。
ホワイト国除外後の具体的影響
- 輸出手続きが煩雑に:一度に3年分の許可が得られた包括許可が無くなり、案件毎に個別審査(用途・購入企業などの詳細資料提出)が必要に。
- 審査期間の長期化:通常90日かかる審査が、商談・調達の遅延を誘発。
- 貿易・産業への影響:韓国側、とくに半導体業界において素材調達の不安やコスト増が懸念された。
WTOと国際的な視点
日本はこの措置がWTO違反に該当しないと主張。安全保障例外(WTO協定第21条)に基づく行動であると説明した。一方、韓国政府はWTOに提訴し、不当な差別措置であると反発。またアメリカは後に、日本の措置を「WTO安全保障例外に該当」と支持している。
韓国側の不適切な事案とは何か?
日本政府が2019年に韓国を「ホワイト国(現在のグループA)」から除外する際に理由として挙げた「不適切な事案」について、日本政府は具体的な事例を公には明示していない。しかし、以下のような報道・分析から、ある程度の背景が推察される。
1. 戦略物資の「不適切な流通」への懸念
韓国メディアや日本の一部報道では、韓国に輸出された高純度フッ化水素の一部が最終的に北朝鮮や第三国(イランなど)に渡った可能性がある、との指摘がある。
- フッ化水素は化学兵器の製造にも転用可能なため、「戦略物資」として厳格に管理されている。
- 日本政府は、輸出後のトレーサビリティ(追跡)が十分でないことを問題視したとされる。
ただし、これについて韓国政府は全面的に否定しており、「違法な転用や第三国への流出の事実は一切ない」と説明している。
2. 韓国の輸出管理体制に関する問題
経産省が発表した資料(2019年7月1日)では、次のような点が指摘されている。
- 韓国は戦略物資に関する管理制度や実施体制が不十分である。
- 日韓間の輸出管理に関する対話(局長級会合など)が2016年以降中断されていた。
- 韓国政府が日本からの再三の申し入れに対し、誠実な対応を取らなかった。
これらから、日本側は「安全保障上の懸念がある」と判断したとしている。
3. 「不適切な事案」の性質と公開制限
世耕弘成経済産業大臣は記者会見で、「不適切な事案の詳細は輸出管理の性質上、個別に明らかにできない」と発言しており、安全保障上の機密情報に関わるため、公表を避けたと考えられる。
「(フッ化水素などが)不適切な目的に使われた事案があった」としつつ、「詳細は答えられない」と明言。
結論
「韓国側の不適切な事案」とは、日本政府が懸念した以下のような点に基づいている。
- 輸出された戦略物資の最終用途や仕向け先の不透明性(例:フッ化水素の行方)。
- 韓国側の輸出管理制度の運用の不備と日韓間の対話の停滞。
- 安全保障上の理由として詳細を非公開にしているが、北朝鮮や中東などの懸念国への流出可能性が根底にあるとの観測も。
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