格差問題をまるで理解しない(自称)専門家たち

書評(辛口増量)

三浦展『下流社会』(2005)

実態調査ではなく、意識調査

 総中流化の「1955年体制」から階層化の「2005年体制」へと社会は変化している、というのが著者の基本的な認識だ。
 だが、それを裏付けるためのデータはすべて階級意識の調査に基づいたものであり、生活実態を調査したものでは一切ない。つまり、階層化が実際に起きているかどうかの調査ではなく、自分を下流と意識する人が増えているという意識変化の調査である。ぱっと流し読みしただけだと階層化の実態調査と勘違いしそうだが、この本からは階層化の実態は一切分からない。本書で行っていることは、個々人の階級意識ごとに上流、中流、下流と分類し、それぞれの消費行動を比較する、ということだ。

  著者はこの意識調査に基づいて、下流とは「コミュニケーション能力、生活能力、働く意欲、学ぶ意欲、消費意欲、つまり総じて人生への意欲が低い」と結論付けているが、自分の生活実態を下流と答えた人が、消費行動において消極的な態度をとるのは当たり前で、ほとんどトートロジーのような研究である。そして消費行動に基づいて「ギャル系」だの「ヤングエグゼクティブ」だのとあたかも血液型のように人々を分類していく。私は、こうした調査には全く意味を見出せなかった。

 著者はマーケティングの専門家だけあって興味があるものは、世代別、意識別に見た集団の消費行動だけのようだ。次から次へとくだらない消費行動の類型が出てくるだけで、一向に階層化の実態は見えてこない。ホントに読んで無駄な本だった。

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