世にも奇妙な韓国政府の日本批判
日韓関係は、過去の植民地支配と歴史認識をめぐってさまざまな軋轢を抱えてきた。だが、文大統領政権下で、日本批判が激しさを増し、日韓の対立は急速に深まっている。終戦以降、ここまで日韓関係が悪化したことはかつてなかった。
2018年末から立て続けに日韓関係の懸案事項が発生している。
- 慰安婦問題における日韓合意の破棄
- 自衛隊機に対するレーダー照射
- 日本企業に対する徴用工賠償判決
- 日本の韓国に対する輸出管理強化
- 日韓秘密軍事情報保護協定(GSOMIA)の破棄
そのたびに文大統領をはじめ、韓国政府関係者は、日本政府を激しく非難してきた。
しかし、その発言は、「礼儀」「自尊心」といった言葉を多用した非常に奇妙なものだ。
・韓国政府の奇妙な発言集
現代の国際関係の常識から逸脱した発言ばかりで、日本政府はどう対処すべきか持て余している状態だ。
相手が何を考えているのか分からなければ、日本としても反論のしようがない。そもそも、どのような発想でこうした批判が出てくるのか。その背景にある韓国側の国際秩序に対する認識や価値観を見極める必要がある。
文政権の思考回路——小中華思想
文在寅政権による一連の日本批判から浮かび上がるのは、韓国が国際法、立憲主義、法治主義といった近代社会の基本理念ではなく、儒教的な発想に基づいて国際関係を理解しているのではないかという疑念である。
儒教的価値観に基づき、中国を中心として周辺国を上下関係で序列づけ、礼儀や儀式によって秩序を保つ———このような価値観は、韓国の一部で「小中華思想」として見られ、これまで主に一部政治家や知識人の特殊な態度として捉えられてきた。
———少なくとも、以前はそう考えられていた。
だが、近年の文大統領や韓国政府関係者による発言を見ると、単なる個人の偏った見解ではなく、国家として本気で近代的な原則——立憲主義、法の支配、国際条約の拘束力——を十分に理解していないのではないかと疑わせる内容が目立つ。
文政権は、表向きは近代的な言葉を使いながらも、その実、国際関係を「小中華思想」に基づいて理解・運用している可能性がある。形式的な言葉とは裏腹に、その根底にある世界観はきわめて前近代的なものではないか。
小中華思想とは何か
儒教的な発想における秩序の基盤は、「長幼の序」、すなわち年長者が年少者より上位に立つという関係性にある。
この関係では、年少者は無条件に年長者を敬い、従うことが求められる。そこに個人の能力や努力といった要素は一切関係なく、生まれながらにして固定された序列である。そして、この序列は不変であり、疑問を抱くこと自体が非倫理的とされる。
こうした価値観を国際関係にも適用しようとするのが、いわゆる中華思想である。現在の文政権の姿勢を見る限り、韓国はこの前近代的な世界観を、現代の国際社会においてもなお温存しているように見える。
この観点からすると、韓国にとって日本は「目下」の存在ということになる。
なぜそうなのかという問いに対して、儒教的な世界観では「そう決まっているからそうだ」としか説明しようがない。関係性は歴史的に固定されており、たとえ現代において実際の国力や制度がどうであれ、それを覆すこと自体が「秩序を乱す」不道徳な行為とされるのだ。
文政権は、このような儒教的序列観に基づく上下関係を日本に対しても適用し、いわば「従属的な態度」を日本に要求している。
そして、それを正当化するための方便として、歴史問題を用いている。
つまり、韓国は時代錯誤とも言える小中華思想を、歴史問題を通じて現代の国際関係に持ち込もうとしている。文政権になって以降、この傾向がより顕著になってきた。
こうした構図を踏まえれば、歴史問題が解決しないのも当然といえる。日本は国際法と条約に基づいて問題を処理しようとしているのに対し、韓国は儒教的な秩序の回復——すなわち、日本が韓国に対して「永遠に目下の態度」をとり続けること——を求めているからである。
文政権の発言を分析すれば、韓国にとっての「歴史問題の解決」とは、日本が未来永劫にわたり謝罪と服従の姿勢を示し続けることに他ならない。このような要求は、対等な関係性という近代の国際理念とは根本的に相容れない。なぜなら、小中華思想には「対等」という概念が存在しないからである。
日本が今後向き合うべき課題
文政権に見られる小中華思想的傾向は、きわめて顕著である。
たとえば、
- 経済的に台頭する中国に対し、政治・経済の両面で接近を強める姿勢
- 北朝鮮との経済統一を志向する政策路線
- 歴史問題を根拠とした強硬な反日姿勢
これらはいずれも、日韓関係を軽視し、韓国が中国的な序列観に基づく上下関係の中で自らの位置を再定義しようとする動きと見てよい。
こうした文政権の基本路線は、単なる外交戦略ではなく、根底に儒教的世界観——すなわち小中華思想——を宿しているがゆえに、日本に対して「対等な関係」を築こうとする意思を見出せない。
このような世界観に韓国がとらわれ続ける限り、近代的な国際法や相互尊重に基づく関係の構築は困難だろう。
問題の本質は、国際秩序に対する認識の違いにある。
近代国民国家を前提とした国際社会の秩序と、中華思想に基づく前近代的な序列秩序との間にある断絶———かつての明治政府が直面した同じ構図に、今また日本は、再び向き合う必要に迫られている。
今後の日韓関係を考える上で、日本は、韓国が必ずしも同じ国際的前提の上に立っているとは限らないという点を、冷静かつ明確に認識しなければならない。
異なる歴史観や世界観の存在を踏まえつつ、あくまで普遍的な国際原則に基づいた外交姿勢を貫くことが、今の日本に求められている。
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