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赤化する韓国:韓国版“瀬戸際外交”の衝撃 ― 文在寅政権が突きつける日本の地政学的試練

韓国 政治
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文在寅 – 急進的な親北派政権の誕生

 2017年5月に発足した文在寅政権以降、日韓関係は急速に悪化の一途をたどっている。背景には、対日強硬姿勢と対北朝鮮に対する融和的な態度がある。こうした傾向は、金大中・廬武鉉といった過去の進歩(左派)政権にも共通していたが、文政権では一層顕著に表れている。

 とりわけ、文在寅大統領の掲げた政策公約は、従来の枠組みを大きく転換する内容を含んでいた。

文在寅政権の主要政策

  • 南北首脳会談の実現および北朝鮮訪問
  • 開城工業団地の再開など、北朝鮮との経済協力の推進
  • 米国が主導するTHAAD(高高度防衛ミサイル)の撤回
  • 在韓米軍への軍事予算の見直し・削減
  • 財閥支配の是正と社会民主主義的経済政策の導入

 これらの政策は、南北融和を重視する一方で、従来の米韓・日韓同盟関係とは緊張を生む要因となっている。実際、文政権発足から約2年の間に、米韓関係・日韓関係の双方が悪化しているのは、こうした外交路線に起因するとの指摘が多い。

 さらに、瀬取り(海上密輸)や軍事的戦略物資の横流しなどの行為によって、韓国が北朝鮮に対する国連の制裁決議案の抜け穴になっている疑惑が濃厚になってきた。これらの逸脱行為は、日米両国との信頼関係に深刻な影響を与えている。

 文大統領が北朝鮮との関係を重視するあまり、同盟国である日米との関係を軽視しているのではないかという懸念は拭えない。もし彼が本気で南北統一を目指し、従来の東アジアの安全保障体制に代わる新たな秩序を模索しているとすれば、それは日米韓同盟を基軸とした現在の地域安定の枠組みに対する大きな挑戦となる。

 文政権は、東アジアにおいて中国を中心とした新たな国際秩序を模索し、そこに朝鮮半島を統一国家として位置づけ、自らがバランサー(調整役)となることを目指しているのかもしれない。この構想が現実味を帯びるならば、東アジアの安全保障は抜本的な再編を迫られることになるだろう。

米中対立と文在寅政権の地政学的選択

 文在寅政権の急進的な外交姿勢の背景には、台頭する中国の存在があると考えられる。2000年代以降、中国は経済的に飛躍的な成長を遂げ、いまや米国に次ぐ世界第2の経済大国となった。並行して軍事力の増強も進み、近年では地域覇権を目指すかのような姿勢も顕在化している。

 中国の政治的伝統や国家観から見ても、今後その覇権志向が後退する可能性は低い。こうしたなか、米中による二大勢力の対立構造が国際社会の新たな軸となるのは、ほぼ避けがたい情勢と言える。

 このような地政学的再編のなかで、朝鮮半島に位置する韓国が中国寄りの立場を取る可能性があるのは、ある意味では地理的・歴史的に自然な流れともいえる。文政権は、そうした将来的な構図を見据えたうえで、朝鮮半島の統一と東アジアの新秩序において、バランサーとしての役割を果たすという国家戦略を構想しているのかもしれない。そう考えれば、これまでの文政権の政策的選択にも一定の一貫性が見えてくる。

韓国版「瀬戸際外交」の可能性

 文政権の外交スタンスは、北朝鮮との統一を中国の支援のもとで実現し、その影響力を背景に日米と対峙するという、いわば新たな韓国版「瀬戸際外交」に近いものとも見える。仮にこのような構想があるとすれば、最も影響を受けるのは日本である。

 現在の日本の安全保障戦略は、日米韓の三国同盟を基軸としており、これによって中国・北朝鮮・ロシアの脅威を抑止するという構図に立脚している。しかし、韓国が同盟の枠組みから離脱する可能性を示唆し、政治的な揺さぶりをかけてきた場合、日本は対応手段を欠くおそれがある。韓国の要求をある程度受け入れざるを得なくなることで、日本の立場は大きく制約されることになるだろう。

 こうした外交手法は、北朝鮮が行ってきた「瀬戸際外交」と通底する部分がある。北朝鮮は、核開発やミサイル実験など、軍事的挑発によって戦争のリスクをちらつかせながら、アメリカや韓国から譲歩を引き出してきた。実際の戦争になれば勝算は乏しいにもかかわらず、周辺諸国が「現状維持」を最優先するために、譲歩に応じざるを得なかったのだ

 北朝鮮は、日米韓のみならず中国やロシアにおいても「現状維持」が最も望まれていることを熟知しており、だからこそ「秩序を壊す」というカードが有効に働くと見ている。このような戦略を、韓国が将来的に踏襲する可能性も否定できない。

 日米韓の軍事協力関係の破棄をちらつかせながら、いわば「ちゃぶ台をひっくり返すぞ」といったような、ある意味自暴自棄的な要求によって、相手に妥協を迫る手法——韓国版「瀬戸際外交」は、北朝鮮が世界的に孤立しながらも政権を維持できているように、現状維持が最重要視される東アジア情勢においては、極めて有効な手段になるだろう。

日本の課題と対応戦略

 もし韓国が、将来的に中国を軸とする国際秩序への接近を強め、その中で独自の外交カードとして「日米同盟からの離脱」をちらつかせるような戦略をとった場合、日本の現状維持路線は明確な限界に直面する

 そのとき、日本は単に譲歩を迫られる受動的な立場にとどまるのではなく、主体的な戦略転換を迫られるだろう。具体的には、日米同盟の強化を基軸に据えつつ、台湾・フィリピン・インドなど、自由と民主主義を共有するアジア諸国との多角的な連携を深めて、共同で対韓国戦略を採ることが重要となる。

 東アジアにおける戦略的主導権を維持するためにも、日本は「現状維持」だけに依存しない外交・安全保障の選択肢を早急に構築していく必要がある。

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