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【格安ツアーの闇】てるみくらぶ悪質倒産劇:計画倒産の疑いと被害拡大の責任

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てるみくらぶ – 資金繰りの悪化の果ての悪質な倒産劇

 2017年3月27日、格安パッケージツアーを主力としていた旅行代理店「てるみくらぶ」は破産手続きを開始した。

 しかし、破産申告を行うまでの数日の動きがあまりに怪しすぎる。。。

 こんな感じ↓

破産直前の不可解な動き

  • 3月22日:事実上の債務不履行
    顧客から預かった航空券代の支払いが資金不足のため滞り、翌23日の国際航空運送協会(IATA)への支払いが不可能となった。(てるみくらぶは、IATAを通じて、航空券を発行している)
    これにより、事実上の債務不履行に陥り、顧客へ航空券が発行できない状態となった。
  • 3月23日:「現金一括入金」キャンペーンの実施
    全国紙に、ゴールデンウィークの顧客をターゲットとした「現金一括入金」キャンペーンの新聞広告を大々的に掲載した。資金が枯渇している状況でのこのキャンペーンは、意図的な資金集めと見られる。
  • 3月24日:虚偽の説明による発券遅延の通知
    一部の利用者に対し、航空券の発券が遅れている旨を通知したが、その理由を「発券システムのトラブル」と説明し、事実を隠蔽した。
  • 3月25日:突然の臨時休業
    突如として臨時休業を発表し、顧客への説明責任を放棄した。
  • 3月26日:観光庁による立ち入り調査
    事態を重く見た観光庁が、旅行業法に基づく立ち入り調査を実施した。
  • 3月27日:破産手続き開始と顧客・内定者の見捨て
    破産手続きを開始した。
    航空券の発券されない旅行客が続出。航空券を受け取ることのできなかった海外渡航中の旅行客約2500人に対して、「自力で帰ってきて!」と見捨てる。
    翌月1日より入社予定だった内定者約50人に、「その話はなかったことで!」と見捨てる。

 これらの動きは、資金繰りの悪化を認識しながらも顧客から資金を集め、最終的に多くの利用者を顧みなかった悪質な倒産劇と言えるだろう。

格安パッケージツアーの構造的リスク

 てるみくらぶの資金繰りは、報道によれば2016年半ばからかなり悪化しており、すでに自転車操業の状態だったとされる。このような状況に陥りやすい背景には、格安パッケージツアーのビジネスモデルが持つ構造的なリスクが挙げられる。

 格安パッケージツアーの基本的な手法は、航空座席や宿泊施設の空きを大量に一括で仕入れることで、単価を大幅に下げることにある。しかし、この手法には以下のリスクが伴う。

  • 大量の先行投資と在庫リスク
    大量に仕入れた予約は、旅行会社が費用を立て替えて先に支払う必要がある。これは会社が大量の在庫を抱えることと同義であり、予約客を確保できなければ、そのまま旅行会社の損失となる。
    航空券や宿泊施設は予約日が過ぎれば価値を失うため、物理的な在庫として残すことすらできない。
  • キャッシュフローの悪化しやすいビジネスモデル
    格安パッケージツアーを取り扱う旅行代理店にとって、販路の拡大や商品開発力以上に重要なのが資金繰りである。
    旅行の企画から予約の確保、そして利用者の入金までには相当な時間差がある。特に、大半の旅行者がクレジットカードで支払う場合、入金はさらに遅延し、分割払いを選択する顧客がいればその期間はさらに長引く。この間の費用はすべて旅行会社が立て替える必要があり、潤沢な資金がなければ事業を継続することが困難な、キャッシュフローが悪化しやすいビジネスモデルと言える。

てるみくらぶの事例は、このような格安パッケージツアーのビジネスモデルが内包する脆弱性と、企業の倫理観の欠如が重なった結果、多くの被害者を生み出した典型的なケースと言えるだろう。

破産直前まで続いた悪質な資金集め

 てるみくらぶは破産手続き開始の数日前まで、「現金一括払いキャンペーン」の広告を全国紙に大々的に掲載していた。昨年から現金一括払いを依頼される利用者がかなりいたと報じられており、これは同社がかなり以前から深刻な現金不足に陥っていたことを如実に示している。

 社内の資金繰り悪化は明白であったはずであり、遅かれ早かれ資金がショートすることは経営陣も認識していたはずだ。GW向けの広告掲載の時点(3月21日)で、経営者は、資金が不足していることを把握し、破産手続きの準備も始めていたと推測される。このことから、同社が最初から旅行を実施する気がなく、資金を搾取するつもりだったと批判されても仕方がないだろう。

 結果として、多くの顧客が詐欺にあったのと同然の状況に陥った。破産手続き後のてるみくらぶの資産は関係取引先に優先的に分配されるため、一般の旅行客が入金した旅行代金が返還される可能性は極めて低い。

拡大した被害規模と経営者の無責任な対応

 てるみくらぶは、最終的に負債総額151億円、旅行業界ではリーマンショック以降最大規模の破産となった。代金を支払い済みの顧客はおよそ9万人、旅行代金の債務は約99億円に上る。特に問題なのは、経営破綻が公になった3月27日時点で、約2500人もの旅行者が海外に渡航中であったことだ。山田千賀子社長は記者会見で、支払い済みの顧客に対し「サービスが提供されない可能性が高く、渡航を控えてほしい」と呼びかけたが、海外渡航中の旅行者に対しては「自力で帰ってきてほしい」と、事実上責任を放棄する形で見捨てた。

 資本主義経済において企業の破産は起こりうる。しかし、通常であれば資金繰りが悪化し事業継続が困難になった時点で、業務を縮小・整理し、契約済みの利用者への対応を済ませてから破産手続きに入るべきである。

 てるみくらぶの経営者は、破産する直前まで顧客を募り被害を拡大させ、多数の旅行者が海外に残っている状況で破産手続きを開始するという、最悪の形で責任を放棄した。

経営者の法的責任は問われないのか

 破産直前まで資金をかき集めた行為は、資金を持ち逃げした計画倒産だと批判されても仕方がない。このような悪質な行為が許されてはならない。資金不足が以前から明白であったことを踏まえれば、山田社長はおそらく法的責任に対しては万全の対策を講じていたと推測される。このまま経営者が破産法の手続きに則って破産を進めるだけ終わらせてはならない。

 今回の事態が「逃げ得」で終わることなく、今後のまともな捜査の展開により、経営者の法的責任が厳しく問われることを期待する。

・全国紙に一面ぶち抜きの巨大広告(21日付)↓

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