格安のパッケージツアーを主に取り扱っていた旅行代理店「てるみくらぶ」が3月27日、破産手続きを開始した。
しかし、破産申告を行うまでの数日の動きがあまりに怪しすぎる。。。
こんな感じ↓
・22日
顧客から預かった航空券代が資金不足のため支払えない事態に。(てるみくらぶは、国際航空運送協会(IATA)を通じて、航空券を発行している)
翌23日の国際航空運送協会(IATA)への支払いができなくなる。(この時点で事実上のデフォルト)
てるみくらぶからの支払いがなければ、当然、航空券は発行されない。
・23日
「現金一括入金」キャンペーンの新聞広告を全国紙に大々的に掲載(しかも、GW客を見込む)。
・24日
一部の利用客に航空券の発券が遅れている旨を通知。しかも、利用者には、発券システムのトラブルと説明。
・25日
なんと臨時休業!!
・26日
観光庁が旅行業法に基づく立ち入り調査を実施。
・27日
破産手続き開始。
航空券の発券されない旅行客が続出。航空券を受け取ることのできなかった海外渡航中の旅行客約2500人に対して、「自力で帰ってきて!」と見捨てる。
翌月1日より入社予定だった内定者約50人に、「その話はなかったことで!」と見捨てる。
資金繰りの悪化の果ての悪質な倒産劇
いくつかの報道を見ていると、てるみくらぶの資金繰りは、去年半ばよりかなり悪化していて、すでに自転車操業だったようだ。
格安のパッケージツアーの手法を一言でざっくりと言うと。。。
航空座席や宿泊施設の空きを大量に一括で押さえて、値段を下げさせて安く仕入れる。
というやり方だ。
でも、大量に仕入れた予約は、旅行会社が建て替えて先払いしなければならない。ようするに会社は、大量在庫を抱えているのと同じだ。
これで予約客が取れなければ、そのまま旅行会社の損失になる。予約日が過ぎれば、即、消滅だ。在庫として抱えておくことすらできない。
そういう意味では、非常に水ものの商品といえるかもしれない。
格安パッケージツアーを主に取り扱っている旅行代理店は、販路の拡大や商品の開発力といったものより、資金繰りの方がよほど重要な業務になってる。
企画を立てて、予約を押さえ、旅行者を募集した時点から、利用者が入金するまでには、相当な時間差がある。大半の旅行者が、クレジットで支払うだろうから、さらに入金は遅くなる(分割払いならさらに引き伸ばされる)。その間の費用は、すべて旅行会社の建て替えだ。よほど潤沢な資金がなければ、回っていかない事業のようにも思える。
で。
手元の資金が足りなくなったら、どうするか?
現金一括入金キャンペーン実施!!しかも破産手続きの直前!!
・全国紙に一面ぶち抜きの巨大広告(21日付)↓
な、なんという悪質っぷり(驚)!!
目先の資金を手に入れるためのなりふり構わない様子が伝わってくる。。。
昨年から、現金一括払いを依頼される利用者がかなりいたらしい。さらには、破産手続きの開始数日前まで、現金一括払いキャンペーンの広告を打ち出す有り様。相当に現金が不足していた様子が伺える。
社内では資金繰りの悪化は明白だったはずだ。
ってことは、遅かれ早かれ、資金がショートすることは分かってたはずだ。
経営者は、資金が不足していることも把握していただろうし、この広告掲載の時点(3月21日)では破産手続きも(おそらく)始めていただろうから、初めから旅行を実施する気がなかったと批判されても仕方がないものだろう。
そんでもって、さんざん被害を拡大させたあとに、破産手続き開始っー!!
・負債総額は151億円、旅行業界ではリーマンショック以降、最大規模!
てるみくらぶ、2500人が海外渡航中 支払い済み8万人超
負債151億円航空券の発券トラブルのあった旅行会社「てるみくらぶ」(東京)が27日、経営破綻した。観光庁は同日、同社のツアーを利用した海外渡航中の旅行者数が26日時点で約2500人に上ると明らかにした。
同社は27日、東京地裁に自己破産を申請し、破産手続き開始の決定を受けた。負債額は約151億円。代金を支払い済みの顧客は8万~9万人とみられ、旅行代金の債務は約99億円。山田千賀子社長は同日の記者会見で支払い済みの顧客に対し「サービスが提供されない可能性が高く、渡航を控えてほしい」と呼びかけた。
航空券の発券トラブルのあった旅行会社「てるみくらぶ」(東京)が27日、経営破綻した。観光庁は同日、同社のツアーを利用した…
この現金一括キャンペーンで入金してしまった旅行客は、詐欺にあったのも同然だ。
破産手続き後のてるみくらぶの資産は、関係取引先に優先的に分配される。一般の旅行客が入金した分のお金は帰ってこない。
こーいった経営者は、破綻しても、関係先との体面をなんとか保って、ほとぼりが冷めた頃あたりに、ケロッと事業再開していたりするんだろうなぁ。
資本主義経済だから、破産は普通に起こり得ることで、それ自体は仕方がないものだ。
しかし、普通であれば、資金繰りが悪化して事業の継続に目処が立たなくなったら、その時点で業務を縮小、整理して、契約済みの利用者への対応を済ませてから、破産手続きに入るべきだろう。
それをこの社長は、最悪の形で、破産手続きに入っている。破産する日のぎりぎりまで顧客を募って、被害を拡大させ、海外渡航中の旅行者が大量に残っている中で、破産手続きを開始し、渡航中の客に対しては、責任を放棄する形で見捨てている。
ぎりぎりまで資金をかき集めて、資金を持ち逃げして、計画倒産したと言われても仕方のない行為だ。
このまま経営者は、破産法の手続きに則って、破産を進めるだけで、それ以上の「法的責任」は問われないのだろうか。資金不足は以前から明白だったであろうから、おそらく、この山田社長は法的責任に対しては万全の対策を行っているのだろう。
こんな逃げ得が許されていいわけがない。今後のまともな捜査の展開を期待するほかない。