日銀の市場介入強化 – 官製相場に出口戦略はあるのか

個人投資家は「日銀が歪めた市場」から逃げた
個人の売買代金は急減、ネット証券を直撃

 例年、材料不足で商いが低調になりがちな8月の株式市場。だが、今年の“夏枯れ”はこれまでにない不穏な空気をはらんでいた。

 8月の東京証券取引所と名古屋証券取引所合計の1日当たり平均売買代金は2兆4628億円。前年同月比で29.7%減、前月比でも13.0の減少となった。

個人投資家の売買代金が落ち込む
 特に落ち込みが激しかったのが個人投資家だ。日本取引所グループがまとめた投資部門別株式売買状況によると、前年同月比で41.7%減、前月比で26.9%の急減だった。委託売買代金全体に占める割合も月平均で19.9%と低迷。昨夏のチャイナショック直後と同水準まで落ち込んだ。

東洋経済

 記事の内容をざっくりとまとめると。。。

・8月の一日平均売買代金は、2兆円半ば、前年同月比で約3割減。
・特に個人投資家の落ち込みが激しく、前年同月比で4割超の減額。
・株価が落ちても日銀が買い支えるので、株価が高値のまま推移し、個人投資家の買い場がなくなっている。
・日銀によるETFの買い入れ枠が、今年の7月で5兆7000億まで増額され、株価が実体経済を反映しなくなる恐れが出てきている。

 日銀によるETFを中心とした株式の買い入れは、2010年12月に年間1兆円の枠で始まり、現在では5兆7000億にまで増額されている。

 投資部門別株式売買状況でみると、個人投資家と海外投資家の売りが続いていて、それを日銀が買い支える形になっている。
 そのため、業績の落ちている企業まで株価が高値で維持されていて、実体経済から乖離し始めている。

 そこで、今の状況から考えられる危険要素をざっと取り上げてみた。

・日銀による買い入れ枠があまりに巨額になりすぎていて、市場の価格決定機能が失われている。
・大口の株主が日銀になると、株主による企業統治が機能しなくなる。
・官製相場と呼ぶべき状況で、海外投資家からの信頼を失わせる。

 そして、最大の問題点が、これ↓

・日銀による株式の買い入れ政策には、出口戦略があるのか?

 政権や政策が変わった途端に、

日銀&政府「はい、今までのは、なし、なし(ヾノ・∀・`)ナイナイ」

 と、なった場合は、一編に投資家たちが逃げ出すだろう。
 今まで高値で維持されていた分、日銀による買い支えがなくなれば、株式市場の暴落が起こることは明白だ。

 日銀が買い支えを政策としてはっきり明言している以上、個人投資家は、今の市場には安心して入って行けそうなものだが、実際には、個人投資家の「市場離れ」が進んでいる状況だ。
 それは、やはり、今の日銀の市場介入には、明確な出口戦略が示されていないからだろう。

 黒田総裁の任期は、2018年で、もう残り2年を切っている。そろそろ市場介入に対する出口戦略を明確にしないと、個人投資家も海外投資家も逃げていくだけで、市場への信頼は回復できないだろう。

 個人投資家の方が先に、自分の出口戦略を考えておく必要があるかもしれない。