【仮想通貨危機】分裂を繰り返すビットコイン – 仮想通貨のガバナンスはいかに確保されるのか?

分裂を繰り返すBitcoin

 ビットコインが規格を巡って再び分裂した。
 8月に新規格を巡ってBitcoinとBitcoin Cashに分裂したばかりだったが、たった3ヶ月のうちに再び分裂したことになる。

 この規格を巡った分裂は、収まる様子が全く見えていない。来月には、さらに別の規格が分裂すると見られている。

8月
・Bitcoin (BTC)からBitcoin Cash (BCH)が分裂
10月
・さらにBitcoin Gold (BCG)が分裂
11月(予定)
・SegWit2x (B2X)分裂しまーす!

アメーバか!

 単細胞生物が増殖するみたいに、次々と新しい仮想通貨が誕生している。この分裂は互いに互換性のないものなので、全く新しい別の仮想通貨ということになる。

 この分裂の要因となったものは、ざっくり言うと、取引所、マイニング業者、開発者間での利害の対立だ。

 仮想通貨は、参入障壁が低いために、有象無象の大量の仮想通貨が乱立する点が問題だった。市場に大量の種類の仮想通貨が乱立している状態で、ビットコインが仮想通貨の基軸通貨となり得るかどうかが、問われていたが、それ以前に、ビットコインが分裂を繰り返すという事態に陥っている。(自ら基軸通貨としての地位を危うくしていく斬新な手法!)

 中央管理者がいないということの弱点が、ここにきて顕著に表れてきている。

キプロス金融危機

 ビットコインが一般に広く注目を集めるきっかけとなったのは、2013年のキプロスの金融危機の際だ。

 2012年、ギリシャ危機のあおりを受けて、キプロスの金融機関が経営破綻する恐れが出てきていた。キプロス政府は、欧州連合(EU)に支援を要請。翌年3月、欧州連合(EU)と国際通期基金(IMF)は、救済策としてキプロスの金融機関に融資を行う代わりに、負債処理費用を預金者にも負担させることを求めた。

 この救済策の条件は、預金に対して課税を実施するというものであり、さらに預金引出制限や海外送金制限など、資本制限も伴うもので、預金者の反発は免れないものだった。

 これがきっかけとなって、政府や国家経済に左右されない「無国籍」の通貨として、ビットコインが一躍注目されることになった。

 ビットコインは、こうした国家財政、国家経済に不安のある国々で、そのリスクヘッジとして急速に人気を集めていった。

仮想通貨のGovernance

 法定通貨は、その国の経済力を担保として信頼が成り立っている。言い換えれば、その信用力は、その国の経済力や政府の政策によって左右されてしまうということでもある。

 中央管理者のいない仮想通貨は、一国の経済や政治の状況に依存することのない理想的な通貨になるはずだった。特に複数の国をまたいで経済活動を行っている人たちには、その持つ意味は大きかったはずだ。

 しかし、ここに来て、中央管理者がいないということの脆弱さが露呈してきたように思える。

 このまま規格や基準を巡って際限のない分裂を繰り返すのか、あるいは、ある程度一定の方向へと収束していくのか、まだ分からない。しばらくは、分裂を巡った混乱が続きそうだ。

 だが、この分裂騒動が、そのまますぐに仮想通貨の衰退につながるとは思えない。

 結局は、管理・統治(Governance)の問題だ。
 たとえ中央管理者がいない状況でも、関係者間での意思の統一を図る統治(Governance)の問題は、普遍的な課題であって、必ず生じる。
 利害や対立をどう関係者間で調整していくことができるのか?それが、今後、仮想通貨をめぐる課題として焦点になっていくはずだ。

 関係者間の間で危機が共有されることができれば、一定の利害を超えて、妥協策を見出していくことも可能かもしれない。そうした開かれたガバナンスの場をどう確保していくのかが、今後のカギとなってくるだろう。