中国は経済的軍事的な脅威である – CIA長官発言
次期CIA長官が上院の公聴会で、中国を独裁的な敵対国と名指しで指摘した。
アメリカのCIA=中央情報局の長官に指名されたバーンズ元国務副長官は24日、上院の公聴会で、中国は「独裁的な敵対国」だと指摘し、「中国に対抗することが今後の国家安全保障の鍵となる」と述べました。
テレ東BIZ(2021年2月25日)
その上で、「長期間にわたる挑戦になるとはっきり認識することが極めて重要だ」として、世界各地の同盟国などと緊密に連携して対応する必要があると説明しました。
アメリカの国家戦略
アメリカの国家としての強さはどこに由来しているのだろうか?
それは、国家戦略を立案する能力とそれを長期にわたって整合的に実施する実行力にある。
大統領が決まり、国家方針の大枠が示されると、国務長官を中心に国家戦略が立案される。この国家戦略は、5年、10年という長期間を見据えて制作されるため、党派的な対立を超えて国家的見地から国益が論じられる。そのため、前政権の方策を参考にし、継承する場合も多い。政官学の間で人材の流動性が高いのもアメリカの特徴で、政策立案には、外部の研究機関や専門家の意見も積極的に反映される。
そして、各方面でその国家戦略に沿って、整合的な政策が実施されていく。こうした明確な国家戦略がアメリカの強さを支えている。
2021年1月、トランプ共和党政権から、バイデン民主党政権へと移行した。この政権移行は、アメリカの国家戦略にどのような影響を与えるのだろうか?
2011年から2014年までオバマ政権下で国務副長官を務めたウィリアム・バーンズ氏が2021年1月、CIA長官に指名された。バーンズ氏は上院の公聴会で、中国をアメリカの経済的、軍事的な脅威であると明言した。次期CIA長官のこの発言は、今後のアメリカの国家戦略を見る上で非常に重要なものになる。
それは、CIAもまたアメリカの国家戦略の形成に大きな影響を与える一機関であるからだ。
CIAによる対日戦略「JAPAN2000」
CIAは過去にもアメリカの対日戦略に大きく関わってきた。1980年代を通じて、日米間の貿易収支、経常収支の不均衡は一向に改善されなかった。当時、国務長官とCIAは、日本を経済的脅威と見做し、10年という長期間を見据えて、対日戦略を練った。
冷戦終結後まもなくの1990年、アメリカのジェームズ・ベイカー国務長官は、「冷戦中の戦勝国は日本だった。冷戦後も戦勝国にさせてはいけない。」と発言している。
翌91年には、CIAが「JAPAN2000」という戦略案を作成した。制作には、ロチェスター工科大学などの著名な学者たちが関わった。この「JAPAN2000」の戦略目標とは、アメリカが日本からの経済的な脅威にさらされているという認識の下、2000年までに日本を経済的に弱体化させるというものだった。
その後の日本の経済的凋落は、まさにアメリカの思惑通りに展開した。
規制緩和、構造改革、金融ビッグバン、郵政民営化、労働市場自由化、等々、「グローバリズム」と「市場原理」の名の下に、90年代を通じて矢継ぎ早に新政策が日本へと導入されていったが、それらの政策はすべてアメリカの意向の下、アメリカ政府から発行される「年次改革要望書」によって実施されていたことが今では分かっている。
アメリカは80年代からすでに日本を経済的な脅威と見做して国家戦略を描いていた。CIAの「JAPAN2000」は、10年先という超長期を見据えた戦略であるが、それでさえ、さらに長期的なアメリカの国家戦略の流れの中の一つという位置付けだろう。
プラザ合意(1985)、前川リポート(1986)、日米構造協議(1989)、年次改革要望書(2001~9)と一貫して、アメリカは日本の経済構造、社会構造の変革を要求してきた。90年代以降の自民党による経済政策が、すべてアメリカの意向を汲んだ米国家戦略に従って行われていたことは間違いない。
アメリカは、国家戦略として一つの政策目標を定めたら、その目標に向け、あらゆる手段を取り、可能な限りの資源を投入する。そして、超長期間にわたり、多方面での諸政策を整合的に、かつ、粘り強く着実に実施していく。その間の政権交代も、野党与党、共和党、民主党も関係ない。これがアメリカの国家としての強さなのだ。
一方の日本はどうであったか?
アメリカの意向にただただ唯々諾々として従っただけだった。国家戦略と呼べるようなものは一切なかった。そもそも国家戦略を思い描くことの出来るような政治家や官僚などもともと存在すらしていなかった。
アメリカへの対抗戦略を採ろうにも、与野党間で基本政策どころか、基礎的な国家像すら共有できていない状態だった。そして、この状況は今でも全く変わっていない。
日米貿易摩擦以降、日本は経済的にアメリカに対して、ひたすら敗退し続けた。アメリカから要望があるたび、中曽根政権、橋本政権はそれに従った。小泉安倍政権以降は対抗しようとする意志さえ見せず、むしろ追従した。日本の90年代は、「失われた10年」と呼ばれたが、すでに「失われた30年」になっている。この間、新自由主義政策によって、日本の産業は空洞化して国際競争力を失った。労働市場が自由化されて、中間層が没落し、格差社会が到来した。竹中のような俗物がいまだに政権に大きな影響力を持ち続けているのは、それがアメリカの意向に従っているからだろう。自民党は最大の売国政党である。政権担当能力のない野党と、売国政権。おそらく「失われた50年」と言われる日が来ることは間違いない。
日本の経済的衰退は、アメリカの周到な国家戦略の結果だと言える。軍事外交面で日米は友好関係にあるが、日米貿易摩擦が深刻化して以降は、アメリカは間違いなく日本を経済上の仮想敵国と見做して対応してきた。冷戦後、アメリカが経済上では敵となったことに多くの日本人は気づいていなかった。それが今の経済的凋落と経済格差の拡大へとつながっていった。まさに戦略なき国家の悲劇と言えるだろう。
今後の対中戦略は? – 日本の進むべき道
日本が経済的に衰退して以降、台頭してきたのは中国だ。
米中貿易戦争は、トランプ政権時代に表面化したが、アメリカはより早く2010年頃から、中国を日本に代わる次の脅威として捉えていたはずだ。その頃から対中戦略を練っていただろう。だからこそ、トランプ政権からバイデン政権へと移っても対中戦略に大きな変化はなかった。むしろバイデン政権はより強硬な対中路線を示している。
アメリカは今後、中国に対し、党派を超えて新たな国家戦略を持って臨むことになるだろう。
その時、日本はどのように行動すべきだろうか?日米貿易摩擦が生じていた当時、アメリカは日本を経済上の仮想的国として見ていた。だが、現在の米中貿易戦争では、中国を軍事上でも経済上でも敵国家と見做している。中国共産党は全人類の敵である。日本は、アメリカと協力し、国際的な中国包囲網を築いていかなくてはならない。だがそれは、アメリカの指示によって行うのではなく、日本独自の国家戦略によってなされるべきだ。
二度と戦略なき国家の悲劇を繰り返してはならない。
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