ケインズとハイエクの対立の理由
ケインズ(ジョン・メイナード・ケインズ)とハイエク(フリードリヒ・ハイエク)は20世紀の経済学における二大巨頭であり、特に経済政策や政府の役割に関する考え方で大きく対立した。
1. 政府の役割に対する考え方の違い
- ケインズ:政府は積極的に経済に介入すべき
- 景気後退(不況)のときには、政府が支出を増やして需要を刺激するべきだと主張(これを「有効需要の原理」と言います)。
- 市場は自己修正するには時間がかかるため、放っておくと失業や不況が長期化する。
- ハイエク:政府の介入はむしろ害になる
- 市場には自動的にバランスをとる「自己調整メカニズム」があると考え、政府の介入は市場を歪めてしまう。
- 特にケインズ的な財政出動は、インフレや資源の誤配分を引き起こすと警告。
2. 景気変動の原因に対する理解の違い
- ケインズ:需要不足が不況の原因
- 人々や企業が将来に不安を感じて支出を減らすと、全体の需要が落ち込み、不況が起きる。
- よって、政府がその「穴」を埋めるために支出すべき。
- ハイエク:過剰な信用供給が景気循環の原因
- 中央銀行による金利の操作(特に低金利)が投資の「誤ったシグナル」を生み、バブルの形成と崩壊をもたらす。
- 不況は、過去の誤った投資を是正する「調整過程」であり、自然に任せるべきとする。
3. 短期 vs 長期の視点
- ケインズ:短期を重視
- 有名な言葉:「長期的には我々はみな死んでいる(In the long run we are all dead)」
- 今の失業や不況を解決することが最優先。
- ハイエク:長期を重視
- 短期的な景気刺激は、将来的により大きな問題(インフレ、資源の浪費、自由の侵害)を引き起こすと警戒。
4. 自由と計画経済に対する姿勢
- ケインズ:ある程度の政府計画を容認
- 自由市場の失敗を補うための政府の役割を肯定。
- ハイエク:自由市場を徹底的に擁護
- 政府の介入が増えると、最終的には個人の自由が脅かされると懸念。
- 著書『隷従への道』では、政府の経済介入が全体主義への道を開くと主張。
まとめ(対比表)
項目 | ケインズ | ハイエク |
---|---|---|
政府の介入 | 積極的に介入すべき | 最小限に抑えるべき |
不況の原因 | 有効需要の不足 | 金融政策の歪み(信用膨張) |
景気対策 | 財政支出で需要を刺激 | 市場の調整を待つべき |
時間の視点 | 短期重視 | 長期重視 |
自由と計画 | ある程度の計画を容認 | 自由市場を絶対視 |
もうRapで決着つけろ
経済学における二大潮流ハイエク的自由主義とケインズ主義———
両者はそれぞれ自らの理論的正当性を主張し続けているが、いずれか一方が常に普遍的に正しいと断定できるものではない。むしろ、経済状況の変化に応じて、適切な理論を柔軟に選択する必要があり、その意味において両学派は相補的な関係にあると言える。
この対立は、本質的に状況依存的な実践選択の問題であり、したがって理論的に最終的な決着がつく性質のものではない。この論争は、すでにおよそ80年にわたり継続しており、今日に至るまで明確な終止符が打たれていない。
もう議論では決着がつかないので、今ではRap Battleで決着を付けようとしているようだ。だが、第三弾まで出ているところを見ると、これでも決着はつかなそうだ。。。💦
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