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【灼熱化する都市】ヒートアイランド(都市熱)対策と公共利益の視点から考える自動販売機規制

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深刻化する夏の気温上昇

 近年、世界的に夏季の気温上昇が顕著になっている。40度を超える高温は、もはや世界各国で珍しい現象ではなくなりつつある。

 特に都市部では、地球温暖化に加えて都市熱(ヒートアイランド)現象の影響もあり、危険な暑さが常態化している。

 日本においても、夏季は冷房の使用が増加するため、年間を通じて最も電力需要が高まる時期である。このため、過去には電力供給が逼迫し、政府や電力会社が国民に対してエアコン使用の自粛を呼びかける事態が発生している。

東京における節電要請

 過去に東京で夏の電力需要が逼迫し、政府や電力会社が国民にエアコン使用の自粛を呼びかけた事例として、以下のものがある。

1. 2011年(平成23年)夏の節電要請

 東日本大震災の影響で、福島第一原子力発電所の事故が発生し、電力供給が不安定となった。これにより、東京電力は2011年の夏に大規模な節電を呼びかけ、特にピーク時の電力需要削減を目的として、家庭や企業に対してエアコンの使用自粛や設定温度の引き上げを推奨した。

2. 2022年(令和4年)夏の電力需給逼迫警報

 2022年の夏、猛暑と電力需給のひっ迫により、東京電力は「電力需給逼迫警報」を発令した。これに伴い、家庭や企業に対して、エアコンの設定温度の引き上げや使用時間の短縮など、節電の協力を呼びかけている。

政治不在──政策課題の優先順位が決定できない日本の政治

 現在、これほど夏の気温上昇が深刻化している状況において、空調(エアコン)の使用を控えさせることは、極めて危険な行為であり、人命に関わる問題だ。

 本来であれば、不要不急な電力需要が何であるかを見極める議論が、まず初めに必要だった。温暖化が深刻化する中では、企業の営利活動を規制し、市民生活を優先することで、過剰な電力消費を抑えるべきだったと言えるだろう。だが、行政は企業の経済活動に踏み込むことに及び腰であったため、生活者の行動規制に頼らざるを得なかった。この対応は極めて合理性に欠けるものであったと同時に、政治の機能不全を示したものだった。(組織票優先の政治では、市民生活や公共的な政策より企業の営利活動が優先されてしまう。)

 確かに、企業の営利活動を保証し、経済的自由を認めることは資本主義の原則である。しかし、環境保全や公共の利益の観点から、一企業の利益や消費者の利便性に対して一定の制限を設けることは、現在の深刻な気温上昇を踏まえれば、むしろやむを得ない措置として認められるべきだろう。

 その際、どの営利活動を規制するかを判断するには、政治的リーダーシップと決断力が不可欠である。環境問題への対応には、従来の利益の分配だけに関心を払う政治ではなく、「負担を誰が担うのか」という観点から負担の分配を考える政治が求められる。

地域社会としての取り組み──自動販売機の屋外設置禁止

 では、現在の気温上昇の対策に関して、地域社会の一員として私たちに何ができるだろうか。

 まずなによりも、地域社会としてできることは、都市熱対策である。

 ヒートアイランド現象は、都市に暮らす人々の生活環境を悪化させ、熱中症などの健康被害を引き起こしている。こうした状況に対処するためには、都市の日常的な排熱源を削減する取り組みが不可欠だ。

 その一つとして注目すべきなのが、自動販売機である。自動販売機は24時間稼働し、飲料の冷却や加温のために電力を消費し、常時周囲に熱を放出している。設置台数の多さを考えれば、その累積的な影響は無視できない。排熱対策の観点からも、屋外に設置された自動販売機は規制されるべきである。

 確かに、自動販売機の規制は企業の経済活動や消費者の利便性を制限することになる。しかし、重要なのは、市民にエアコン使用の自粛を呼びかけなければならないような状況下で、何を優先し、何を規制すべきかを判断することだ。

 自動販売機については、コンビニやスーパーなど、飲料を入手する代替手段が十分に存在する。2021年時点で国内の飲料自販機設置台数は約260万台とされ、首都圏では30人に1台の割合で設置されて、過剰な乱立状況であり、環境負荷も極めて大きい。
 また、自動販売機が規制されることによって受ける経済的損失や利便性の低下は、エアコンの使用を自粛してまで守らなくてはいけないものではない。環境保全と市民生活を優先する観点から、自動販売機の屋外設置規制は合理的な措置と言える。

何を規制するべきか──公共的価値観に基づいた総合的判断から

 もちろん闇雲な経済規制は好ましくない。したがって、規制の必要性を判断する際には、社会的重要度の低いもの、公共的価値観にそぐわないもの、代替手段が整っているもの、といった複数の観点から総合的に検討する必要がある。

 自動販売機については、ヒートアイランド対策の観点に加え、都市景観の保護という観点からも問題がある。自動販売機の無秩序な増加は、街角の至るところに広告や照明を伴って並ぶことで、都市景観を著しく損ない、落ち着きのない空間を生み出している。景観は市民の生活の質を左右する重要な要素であり、都市の魅力や観光資源とも直結している。

 したがって、無制限に設置される自動販売機を規制することは、美しい街並みを守り、持続可能で調和の取れた都市環境を実現するうえでも重要な政策課題だろう。具体的には、屋外設置の自動販売機は禁止し、必要な場合には屋内施設に限定するなどの規制を導入すべきである。
 このように、規制は環境保全と景観形成という公共的利益の観点から総合的に判断する必要がある。自動販売機の屋外設置の禁止は、その公共的価値に適った重要な施策の一つとして挙げることができるだろう。

 気温上昇は今後も続くだろう。それに伴い夏季の電力需要もさらに増加することが見込まれる。その際、生命に関わるリスクを伴うエアコン使用の自粛を市民に要請するのではなく、公共的観点から総合的に判断し、以下のような経済活動については、一定の規制を設けるべきだ。

  • 社会的に不必要なもの:店舗の24時間営業、パチンコ店、屋外ディスプレイやネオン広告
  • 代替手段が整っているもの:自動販売機

 都市部の気温上昇はすでに生命に関わるほど深刻になっている。そして、今後、温暖化現象が改善される見込みはほとんどない。地域社会にできることは限られているが、それは何もせずに傍観すればよいという意味ではない。少なくとも、都市熱対策は地域自治体が主導して取り組むことが可能な課題であり、できることから少しずつ実行していくことが求められている。

 ──40度を超える日々が現実のものとなる前に!

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