ロシア、北方領土に新型ミサイル配備
ロシア通信などは22日、ロシア太平洋艦隊の機関紙の報道として、北方領土の択捉島と国後島に新型の地対艦ミサイル「バスチオン」と「バル」をそれぞれ配備したと伝えた。19日の安倍晋三首相とプーチン大統領の会談直後のタイミングで、日本との平和条約交渉にかかわらず北方領土の軍備強化を進めるロシアの姿勢が鮮明になった。
ロシアは北方領土での軍備強化をかねて計画しており、ショイグ国防相は3月、「年内にクリール諸島(北方領土と千島列島)にミサイルを配備する」と表明していた。
ロシアは北方領土を北極圏とアジアを結ぶ航路の防衛の拠点と位置付けている。バスチオンとバルの射程はそれぞれ300キロと130キロ。年末までに日本海の海域で発射演習を行うという。
アメリカ大統領選が、トランプの勝利に終わり、日米安保の先行きに不透明感が訪れると、早速、ロシアが日本の足元を見るかのような挑発的な外交交渉に出てきた。
ロシアは、過去にも似たような状況下で日本に対し、挑発的な外交交渉に出た経緯がある。
2009年以降、日本政府は、民主党政権下で、沖縄の米軍基地問題をめぐって、日米安保の見直しを図ろうとして、日米関係が悪化していた。すると、その間隙を突いて、中国が尖閣諸島周辺へと領海侵犯を繰り返し、日米安保の出方を探るような行動をとり始めた。2010年9月7日には、中国の不法操業漁船と日本の海上保安庁の巡視船の衝突事故が起きている。
日本が中国との領土問題で揺れ始めると、今度は、ロシア政府がその足元を見るかのようにして、2010年11月、突如として、メドベージェフ大統領の北方領土訪問を実行した。
日米安保を中心とした極東の安全保障が不安定化し、日中間で領土問題が再燃したのに乗じて、ロシアが北方領土の主権を国際的に宣言した形だ。
当時の記事からは、日本政府の手詰まり状態が伝わってくる。
ロシア大統領が北方領土上陸、「日本は打つ手なし」―中国紙
2010年11月2日、ロシアのメドベージェフ大統領が旧ソ連時代を含めロシアの国家元首として初めて北方領土の国後島を訪問した問題で、中国の専門家は「日本は打つ手なし」と分析している。新京報が伝えた。
北方領土はロシアが長年にわたり実効支配してきたが、今回の大統領訪問でロシア側が主権を宣言した形となった。北方領土への首脳訪問は日ロ関係への配慮から両国とも避けてきたはずだが、なぜロシアはこの時期に大統領訪問を強行したのだろうか?
中国社会科学院のロシア問題専門家・姜毅(ジアン・イー)氏によれば、大統領は9月ごろから北方領土訪問を明言しており、ようやく国民との約束を守った形。目的は「北方四島がロシア領であること」を宣言すること。今後の“連鎖反応”については「ほとんど何も起こらないはず」とし、「日本側は抗議する以外、何も打つ手はない」と指摘した。
日米安保が揺らぐと、極東の軍事的均衡が崩れて、領土問題をめぐった軍事的緊張が高まってくる。そして、その度に、中国、ロシアが不穏な行動をとり始める。
今回のロシア政府による北方領土へのミサイル配備の宣言は、来月12月にもプーチン大統領の訪日を控えているさなかに行われたものだ。
アメリカの政変を背景に、ロシア側が、日本へ対して強硬な姿勢で臨もうとする姿が、はっきりと表れている。
ロシアは、トランプ大統領誕生による日米関係の変化と軍事的威嚇を盾に、日本に一方的な譲歩を要求してくるだろう。12月の日ロ首脳会談は、日本政府がよほどの外交戦略を持って臨まない限り、日本がただロシアに対して経済援助を行うだけの一方的な譲歩を強いられる結果になりかねない。
日ロ間の平和条約締結までの道のりはまだまだ遠く、今後の日ロ交渉には、また暗雲が立ち込め始めている。