山崎元『お金をふやす本当の常識』(2005)
アベノミクスの影響やネット証券の拡大によって、株式投資を始めた人も多いと思うが、株式投資を始めるにあたって、まず最初に読んでおいた方がいいと思うのが本書。株式投資に限らず、そもそも資産運用のために必要な基本的考え方から説明していて、初心者にも分かりやすい。
株式投資とは何か?という基本のキの質問に対して、本書では次のようにまとめている。
- 株価はあくまでも予想に対して形成されるもの
- 株主にとってもっとも重要なのは会社利益
- 株式投資は、利益予想の変化に伴ってどこかに利益機会が生じないかという投資家同士の駆け引き
なーるほど。
そして本書では、株式投資の醍醐味は個別株投資にあると説く。
最近は、指数連動型の投資信託が人気だが、それを積立で購入するだけでは、銀行に預金しているのと大差ない。自分で調べ、自分で判断して投資することにこそ、株式投資の本質がある。
国際情勢や経済動向を調べ、企業の将来の収益を予測すること。特に、自分なりに納得できる答えを見つけることが重要だ。
そうした過程を経ることで、株式投資は単なるギャンブルや金儲けではなく、「教養」の一つと捉えることができるようになる。
そして、実際に個別企業の株に投資する際には、七つの手順を踏むことが大事だという。
- 個別企業に興味を持つ
- PER(株価収益率)を見る
- 増益率を見る
- PERと増益率を、同業種の他の銘柄と比較する
- 過去の利益予想の変化と株価の変動を比較する
- 出来高を見る
- 他の保有株との関係を考える
PERとは、一株あたりの利益で株価を割った数値である。たとえば、純利益が50億円、発行株数が1億株なら、一株あたりの利益は50円。株価が1000円の場合、PERは20倍となる。「○○倍」と表現されるのは、株価が一株利益の何倍かを示しているためだ。
この一株利益は、通常「現在の決算期の予想一株利益」が用いられる。たとえば、2015年9月時点で3月決算の企業に興味を持った場合、2016年3月期の予想一株利益を見ることになる。
増益率は、前年度の決算実績と今期の予想、さらに来期の予想との比較で、それぞれの伸び率を確認する。これと同様の調査を、同業種の他の銘柄についても行うとよい。
一般的に、利益成長率が高く、それに対してPERが低い銘柄は「割安株」とされる。
このようにして、将来有望な銘柄を見つけ出すことが、株式投資の最大の楽しさである。本書が示すような方法で、社会的教養を身につけながら自らの資産を増やしていけるのであれば、それが最も理想的な株式投資の在り方だろう。
山崎元『お金をふやす本当の常識』(2005)
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