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【新型コロナウイルス】不要不急のカタカナ語はお控えください!

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コロナウイルス報道とカタカナ語の氾濫について考える

 新型コロナウイルスの感染拡大が続いており、先行きがまったく見えない状況が続いています。不安を感じる人も増えており、感染者の増加に伴って社会全体の不安も拡大しています。

 こうした非常時には、混乱を避け、冷静な判断と行動を取るためにも、正確な情報を集めることが不可欠です。統計や科学的調査に基づく正しい情報を得ることで、過度に恐れたり、逆に軽視したりすることも防げます。

 しかし、現実には情報があふれすぎており、「何が正しいのか分からない」と感じる人も多いのではないでしょうか。SNSやインターネット上では、根拠のない噂やデマも飛び交っており、混乱に拍車をかけています。

 こうした状況を受けて、政府や公共機関、報道機関は、正確で分かりやすい情報を提供する責任があります。ところが、実際にはその責任を果たしているとは言いがたい面もあります。

不要なカタカナ語が混乱を招く

 特に問題なのが、非常事態であるにもかかわらず、政府や報道機関が意味の不明瞭なカタカナ語を多用している点です。

 「クラスター」「オーバーシュート」「ロックダウン」——これらの言葉を新型コロナが流行する前から知っていた人が、果たしてどれだけいたでしょうか。しかも、これらの言葉は本来の語義とは異なる、日本独自の解釈で使われていることも少なくありません。

 さらに、カタカナで表記されることで、原語のスペルが分からず、調べようにも調べられない(実際、調べようとしない人も多い)。仮に綴りが分かっても、調べてみると本来の意味とは全く違っていた——というケースも多いのです。

 つまり、こうしたカタカナ語は、人々を正しく理解させるどころか、むしろ混乱させる原因になっているのです。

専門用語だから訳せない? それは知的怠慢

 一部の専門家は、「これは専門用語だから翻訳できない」と言います。しかし、例えば福沢諭吉が「ソサエティー」や「エコノミー」などとカタカナで済ませたでしょうか? 彼は西洋の概念に対して、適切な訳語を創り出す努力を惜しみませんでした。

 今の日本の政府や専門家、報道機関は、その努力を放棄しているように見えます。これは単なる知的怠慢です。専門家であればこそ、正確かつ分かりやすい訳語を提示する責任があります。「できない」のではなく「やっていない」だけです。

 聞き慣れないカタカナ語を使って、自分だけが分かっているような気になっているとすれば、それは「意識高い系」を装うだけの浅薄な態度にすぎません。

カタカナ語が思考停止を招く

 カタカナ語には、使っている側にも聞いている側にも、「雰囲気で分かった気にさせる」作用があります。だからこそ危険なのです。意味をきちんと理解しないまま使うことで、言葉の内実が空洞化し、内容の検証が行われなくなってしまいます。

 特に新しい言葉を使うことで、自分が新しい情報を理解したかのような錯覚に陥るのは大きな問題です。言葉を学ぶとは、意味を丁寧に捉えるということであり、「雰囲気」ではなく「内容」に意識を向けるべきです。

カタカナ語の意味を検証し、言い換えを考える

 以上の問題を踏まえ、次に、コロナウイルス関連の報道で濫用されているカタカナ語が本来の意味で正しく使われているかどうかを確認していきましょう。また、それらをより適切に伝えるための日本語訳語が存在するのかについても、検証していきたいと思います。

コロナウイルス関連のカタカナ語を検証する!

(英語の定義は、Cambridge Dictionaryより引用)

1. Outbreak(アウトブレイク)

Cambridge Dictionary
a time when something suddenly begins, especially a disease or something else dangerous or unpleasant
「何か(特に病気や危険なこと)が突発的に始まるとき」

解説:

 「発生」「勃発」と訳されるこの語は、医療や公衆衛生の分野で使われる専門用語です。特定の地域や期間内に、病気や感染症が突発的に「発生」することを指します。

 報道では「アウトブレイク」という語がそのまま使われることがありますが、日本語の「感染拡大の発生」や「感染の突発的拡大」と言い換える方が、正確で伝わりやすいでしょう。

2. Cluster(クラスター)

Cambridge Dictionary
a group of similar things that are close together in a small area
a group of similar events that happen within a small area or among a small group of people

「似たものが密集している集まり」「ある範囲で同時多発的に起きる出来事の集まり」

解説:

 多くの学術分野で使われており、それぞれの分野に応じた訳語があります。医療や公衆衛生では、地理的・時間的に集中している(感染者の)集団を指します。

 日本語では「集団感染」という訳語がよく使われますが、これは結果(感染の有無)に焦点を当てているのに対し、「cluster」は感染者の「集団」そのものを意味します。したがって、「感染者集団」「集団感染者」と訳す方が、より正確です。

3. Lockdown(ロックダウン)

Cambridge Dictionary
a situation in which people are not allowed to enter or leave a building or area freely because of an emergency
「緊急時における建物や地域の封鎖・出入り制限」

解説:

 「都市封鎖」と訳されることが多いですが、実際には都市に限らず、建物・施設・地域などにおける強制的な移動制限全般を指します。

 原義に忠実に訳すなら、「強制封鎖」「移動制限措置」などのほうが適切です。また「ロックダウン」は「Rock」ではなく「Lock」。報道の中でも誤記が見受けられるので注意が必要です。

4. Overshoot(オーバーシュート)

Cambridge Dictionary
to go further than the end of or past something, without intending to
to go past or beyond a limit or stopping place
to spend more money than originally planned

「行き過ぎる」「限界や停止点を越える」「予算を超える」

解説:

 この語は現在、もっともあいまいに使われているカタカナ語の一つです。感染者の急増を示す意味合いで使われていますが、その使い方は非常に限定的で、英語圏の一般的な医療報道では見られません

 もともとは経済や金融の文脈で使われる用語で、たとえば予算超過や金利の急騰など「予想値を超える現象」を指します。それを「感染者数の急増」に転用しているようですが、疫学では標準的な用語とは言えません

 コロナウイルスについての海外の報道で、overshootという言葉を使っている場面は、残念ながら、私は見つけることができませんでした。もしかすると、ある英語論文に偶然登場したovershootを見つけた日本の研究者が、使われ方の意味も考えずに「これは使える!」と飛びついたのでは……?実際、意味や文法(名詞か動詞か)も曖昧なまま使われており、聞き手の混乱を招いています。ちなみに、小池さんが大好きな言葉の一つでもあります。

結論

「感染爆発」「急増の危機」など、文脈に応じた日本語表現に置き換えるべきです。雰囲気で使う横文字は、思考停止を招くだけです。

総括:カタカナ語の使用は慎重に

 新型コロナ関連で頻出するカタカナ語の多くは、本来の意味を正確に理解せずに使用されているケースが少なくありません。その結果、報道や発信がわかりにくくなり、かえって人々の混乱を招いています。

 伝えるべきは「雰囲気」ではなく「内容」です。専門用語であっても、正確で分かりやすい訳語を用いる努力を怠るべきではありません。

 はぁ、こうやって意識高い系のカタカナ語が日々、次から次へと生まれていってるんだろーなぁ。。。😰

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