一時代の終焉──「新古書店」という発明の功績と限界
「新古書店」という業態を築いたブックオフの存在は、出版業界における一つの時代を象徴していたといっても過言ではない。
1990年代以降、出版不況が続き、「本が売れない時代」が到来した。出版社は一冊あたりの売上減少を補うために、新刊の出版点数を急激に増加させた。その結果、1990年代半ばには年間8万点以上の新刊が出版されるようになり、市場には大量の本が溢れかえった。
この「過剰供給」により、多くの書籍は粗製濫造となり、個々の本の価値は急激に低下した。売れなければ即絶版となり、本の寿命は極端に短くなった。
そうした中で、流通からこぼれ落ちた本を拾い上げ、新たな読者へと橋渡しをしたのがブックオフである。
絶版書籍の受け皿としてのブックオフ
ブックオフの1号店が誕生したのは1990年。それ以降、同社は全国へと店舗網を拡大し、1990年代から2010年代にかけてはまさにブックオフの全盛期であった。
当時のブックオフでは、少し探せば絶版となった希少な本や、他では手に入らない貴重な書籍を見つけることができた。棚に並ぶラインナップには、単なる中古本を超えた「再発見の価値」があり、本好きにとっては宝探しのような楽しさがあった。
筆者自身も頻繁に店舗を訪れ、思いがけない本との出会いを何度も経験した。
ネット時代の到来と、ブックオフの存在意義
しかしながら、そうした「モノとしての本を探す楽しみ」の時代も、静かに終焉を迎えつつある。
本を探す行為は、いまやスマートフォン一つで完結する。ネット検索で即座に在庫や価格がわかり、配送まで完了する便利な時代になった。
こうした利便性の前に、実店舗での偶然的な出会いや手触りのある探索の価値は、徐々に押しやられている。ブックオフもその例外ではなく、存在意義が問い直されている段階にある。
電子化の時代にあって、一般書店は大型化の道を進んでいる。
電子化が時代の流れであっても、すべてのコンテンツが電子化されていくわけではない。電子化される一方で、モノとしての本やCDは残り続ける。
そうしたモノへの需要に応えるためには、多店舗を展開するのではなく、少数の大型店舗に集約して、一店舗当たりの取扱品点数を増やす方がいい。
実店舗の世界では、モノを探す楽しさ、発見する楽しさ、というのを提供できるような大型店だけが今後は生き残っていくはず。
書店業界では現在、小規模店舗が淘汰されつつあり、資本力のある大型店舗だけが生き残っている。
今後、ブックオフも一般書店と同様に、同じ岐路に立たされることになるだろう。
利用者・株主の立場から願う再建
それでも、やっぱりブックオフがこのまま消えてしまうのは寂しい。長年の利用者としても、そして株主としても、やるせなさを感じてしまう。
ブックオフは、「本を循環させる」という独自の文化を生み出し、多くの人に読書の機会を与えてきた。その社会的意義を、たとえ業態が変わろうとも引き継いでほしい。
来期こそは、業績の黒字化を果たし、再び存在感を取り戻してほしい。そして、できれば配当も──増やしてほしいと、切実に願っている。
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