ブルシット・ジョブ
デヴィッド・グレーバーの『ブルシット・ジョブ』が話題となっている。
なぜ、この本を日本人が書けなかったのか?日本人にこそ突き刺さる(ブッ刺さる)本だ。
ブルシット・ジョブは、日常の働き方の至る所に溢れている。だが、それは労働者だけの話ではない。実は、消費者としても関わるものだ。
日本の身の回りには、至る所にブルシット・ジョブが溢れてる。
たとえば。。。
薬局での話
2年前、某薬局にて
昨日からちょっと喉が痛い。。。おそらく風邪ひいた。このまま熱が出てくるパターンだな。。。
とりあえず、パブ○ン買っておこう。。。
レジの店員さん:あのー、こちら確認が必要になりますので、少々お待ちいただけますか?
自分:え?確認?あ、はい。。。
薬剤師:こちらのお薬、ご利用目的は何になりますかぁ~?
自分:えっ、え?薬の利用目的?かぜっぽいんで。。。
薬剤師:ご自身でご利用ですかぁ~?
自分:あ。はい。
薬剤師:他に今、お使いになっている薬ありますかぁ~
***
あと、三つぐらい質問されて、最後に署名までさせられた。。。
なんだ、これ?いつから、こんなん必要になったんだ?
ちょっと調べてみたら、乱用の恐れのある風邪薬に関して販売の規制が強化されたらしい。(令和5年4月から)
近年、若年層を中心に市販の風邪薬や咳止めの過剰摂取が社会問題化していることを受けて、厚生労働省は、新たに販売規制を設けた。
1. エフェドリン
2. コデイン
3. ジヒドロコデイン
4. ブロモバレリル尿素
5. プソイドエフェドリン
6. メチルエフェドリン
上記の成分が含まれる薬品に関して、乱用目的ではないかの確認を薬剤師などが行うこと、さらにその利用状況、購入状況等の確認が義務付けられた。
未成年者と思われる際には、それに加えて、購入者の名前を写真付きの身分証で確認し、販売した情報を記録することが必要になる。
そして、昨年同じ薬局にて
また、風邪っぽい。。。とりあえず、また○ブロン買っておくか。。。
あ、もしかして身分証が必要かな。。。?まぁ、それは顔パスで大丈夫か。。。(泣)
でも、また、いろいろ聞かれるのかな。。。メンドウだな。
自分:あの。。。この薬もらいたいんですが。。。(空箱を渡す)
店員さん:はい、ではこちら確認お願いします。(注意事項書かれたシート渡される)
自分:はぁ。。。
店員さん:はい、では、XXXX円です!
自分:え?あ。どうも。。。
ん?
いつの間にか。。。
めっちゃ簡略化されてるっ!
レジでの業務負担が大きかったのだろう、注意事項を自分で見て確認終了である。
あっという間に形骸化した。
お酒購入する際の年齢確認と全く同じ。
ただやっていますという形をとっているだけで、規制の実質的な意味など全くない。
やっている意味が全くないなら、それは制度設計が初めから間違っているのだ。
わざわざ現場での業務負担を増やしてまで、新たな規制を導入したのだから、規制として効果のある制度を作るべきだ。
たとえば、アメリカではお酒を購入するには、お酒専門店(リキアーストア)で、IDを提示しないと買えない。アルコールの販売規制に関してけっこう厳密に守られている。
やるなら、これくらいやるべきだ。
だだやってますという形だけ整えることは、規制の意味も全くないし、単に作業負担を増やしただけで終わりである。
ブルシット・ジョブが増えるワケ
作業だけ残って、効果は何もなし———
なぜ、こうした無駄な作業が出来上がるのか。それは、日本人全員の共犯関係によって成立する。
厚生労働省:なんか最近、薬物乱用に対する批判が厳しいから、とりあえず規制だけ作って、あとは現場に丸投げでいいや。それが実質的な効果を生むかどうかなんて、オレたちの知ったことじゃねーし。規制は作ったからね。あとは、薬局の責任。
薬局:現場の苦労も知らずに、勝手な規則作りやがって。とりあえず、厚生労働省の指導要領にかなえばいいんだろ?それが実質的な効果を生むかどうかなんて、オレたちの知ったことじゃーねし。規則は実施したからね。あとは、消費者の責任。
消費者:またメンドウな手続き増えたな。でも、どうせちゃんと確認なんてしてないし、適当に答えればいいや。オレはちゃんとやったからね。他のヤツがどうなろうと、知ったことじゃねーし。そいつの責任。
未成年の若者:はっひゃー!!ふへへへへぇ。。。
これは、些細な一例に過ぎない。似たような「形だけ」やりました、という作業は至る所に溢れている。労働者、消費者関係なしに。。。
コメント