第48回衆議院議員総選挙(2017年)
2017年10月22日、第48回衆議院議員総選挙が実施された。大型台風が日本列島を直撃するという悪天候の中での投票となった。
選挙の主な特徴
投票率の低迷
今回の投票率は53.68%であり、戦後2番目の低さであった。参考までに、前回2014年の衆院選では52.66%と、戦後最低の記録を更新していた。
年 | 投票率 |
---|---|
2014年(前回) | 52.66%(戦後最低) |
2017年(今回) | 53.68%(戦後2番目) |
18歳選挙権の導入後、初の衆院選
2015年に選挙権年齢が「20歳以上」から「18歳以上」に引き下げられて以降、今回が初の衆議院議員総選挙であった。新たに有権者となった18歳・19歳の投票率は41.51%にとどまり、全体よりも低い水準となった。
期日前投票の過去最多記録
悪天候への備えもあり、期日前投票者数は2137万人に達し、これは全有権者の20.1%を占め、過去最多の数字である。
選挙結果の概要
与党が3分の2超を維持
自民党は単独で284議席、連立を組む公明党は29議席を獲得し、与党合計で313議席となった。これにより、衆議院(定数465)の3分の2(310議席)を超える議席を維持した。
政党 | 獲得議席 | 備考 |
---|---|---|
自民党 | 284 | 単独で過半数超 |
公明党 | 29 | 与党連立 |
与党合計 | 313 | 3分の2超(310議席) |
野党の動向
- 立憲民主党が55議席を獲得し、結党から短期間で野党第一党に躍進。
- 希望の党は50議席にとどまり、当初の期待を下回った。
- その他の野党では、日本維新の会が11議席、共産党が12議席、社民党が2議席と、全体的に伸び悩んだ。
野党 | 獲得議席 |
---|---|
立憲民主党 | 55 |
希望の党 | 50 |
共産党 | 12 |
日本維新の会 | 11 |
社民党 | 2 |
総括
今回の総選挙により、与党は前回参議院選挙と合わせて衆参両院で憲法改正に必要な3分の2以上の議席を確保した。新党の台頭、若年層投票率の低さ、そして期日前投票の急増など、政治参加の形に変化が現れた選挙でもあった。
いびつな始まりとなった第48回衆議院議員総選挙
今回の衆議院議員総選挙は、異例かついびつな形で幕を開けた。
安倍晋三首相は2017年9月25日、臨時国会の冒頭で衆議院の解散を表明したが、本会議に出席することなく、戦後初となる「冒頭解散」となった。これは、森友・加計学園問題などへの追及を避け、国会論戦を回避する意図があるとして、強い批判を招いた。
野党の混乱と分裂
一方、野党側はこの安倍政権の国会軽視に対し、効果的な批判を行うことができなかった。とりわけ、選挙直前における野党再編の迷走ぶりは深刻であった。
- 小池百合子東京都知事は、安倍政権への逆風をチャンスと捉え、自らが党首を務める「希望の党」を新たに結成。首相の座を狙ったとも取れる、強い政治的野心を露わにした。
- 民進党は、またしても選挙直前に看板を掛け替える混乱に陥った。前原誠司代表は、小池人気に乗じる形で、党ごと希望の党へ「合流」する方針を決定。これにより、民進党は実質的に解党された。
- しかし、希望の党は保守路線を打ち出す中で、民進党のリベラル系、特に護憲派の議員に対して「排除」の方針を明言し、公認を認めなかった。
- 排除された側の受け皿として、枝野幸男が「立憲民主党」を新たに立ち上げた。理念不在と批判されがちな野党の中で、立憲民主党はむしろ明確な立場を示したことで、多くの有権者の共感を得た。
- 結果として、希望の党と立憲民主党に分裂した野党は、選挙において反自民票を大きく割る形となり、自滅的な展開を招いた。
民進党前原代表の短絡的な合流決定と、小池都知事による希望の党の理念不明瞭な拡張は、結局のところ野党の信頼性を損ない、自民党を利する展開を加速させた。
自民党が勝利する構造的要因
今回の選挙結果──自民党の圧勝と衆参両院における3分の2超の議席確保──は、いくつかの明確な構造的条件によって後押しされた。
- 投票率の低下
投票率は53.68%と低調であり、前回2014年に次ぐ戦後2番目の低さであった。投票率が低いと、動員力のある組織票(業界団体や宗教団体など)が有利になり、自民党に有利な構図が生まれる。 - 野党の分裂
小選挙区制では、複数の野党が候補を立てれば票が割れ、結果として与党候補が当選しやすくなる。今回も野党間で候補者調整が不十分で、各地で票の分裂が起きた。 - 争点の不在
選挙全体を通じて、明確な争点が浮上しなかった。有権者は選択の基準を持ちにくくなり、その結果、現状維持の傾向が強まり、自民党に投票が集まる構造が出来上がった。
このように、低投票率、野党の分裂、争点の不在という三つの条件が重なった結果、自民党は「歴史的圧勝」を遂げた。そしてその結果として、衆参両院で憲法改正の発議に必要な3分の2超の議席を保持する体制が整い、憲法改正の議論が現実味を帯びてきた。
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