ソニー、業績回復の背景とは──2018年に何が起きたのか?
かつて「ウォークマン」や「トリニトロン」で世界を席巻したソニーは、2000年代後半以降、エレクトロニクス事業の不振などから長らく苦戦を強いられてきた。しかし、2018年3月期には連結営業利益が約20年ぶりの高水準となる7,300億円に達し、業績は見事に回復軌道へと乗った。では、ソニー復活の背景には何があったのか。以下にその主な要因を解説する。
1. 事業構造改革の成果
長年ソニーを苦しめていたのが、赤字が続いたテレビやパソコンなどのエレクトロニクス事業だった。ソニーはこれらの不採算事業を段階的に整理・再編。2014年にはPCブランド「VAIO」を売却し、テレビ事業も分社化。経営資源を成長分野に集中させる「選択と集中」の方針を徹底した。
これにより、全体の収益構造が大きく改善。採算重視の経営に転換することで、安定的な利益体質へと変化した。
2. ゲーム&ネットワークサービス(G&NS)の成長
ソニーの成長を大きく牽引したのが、PlayStation 4(PS4)を中心としたゲーム事業だ。PS4は世界的なヒットを記録し、関連するソフトウェアやネットワークサービス(PlayStation Plusなど)も順調に拡大。
2018年3月期にはゲーム&ネットワークサービスの売上高が前期比15%増の1兆8,900億円に達し、ソニー全体の利益を大きく押し上げた。吉田憲一郎CFOはこの年、「PS4は収穫期を迎えている」と述べている。
3. 半導体(イメージセンサー)事業の好調
スマートフォン市場の拡大とともに、カメラ用のCMOSイメージセンサーの需要が急増。ソニーはこの分野で世界シェアトップを維持しており、Appleをはじめとする多くのメーカーに供給している。
2016年には熊本地震で主力工場が被災し一時的に落ち込んだが、その後は迅速な復旧と投資拡大で回復。2018年には半導体部門の売上高が前期比14%増の8,800億円に達し、業績を支える柱となった。
4. 映画・音楽などコンテンツ事業の収益安定化
ハリウッド映画の減損処理などで過去には足を引っ張った映画事業も、2018年には13%の増収で回復基調に。音楽事業も安定的な収益を維持し、ストリーミングサービスの拡大が追い風となった。
これらの「コンテンツ事業」は、為替の影響を受けにくく、ソニーにとってリスク分散にもつながる重要な収益源となっている。
5. グローバル市場の追い風
2017年のフランス大統領選で親EU派のエマニュエル・マクロン氏が当選したことなどにより、欧州市場の政治リスクが後退。ソニーは欧州売上比率が2割と高めであり、これも株価や投資家心理のプラス材料となった。
まとめ:地道な改革が実を結んだソニーの復活
2018年のソニーの業績回復は、単なる一時的な好景気によるものではない。10年以上にわたる地道な構造改革、成長分野への集中投資、リスク管理の強化といった、総合的な経営努力の成果といえる。
「ソニー復活」の象徴ともいえる2018年は、同社が過去の失敗から学び、変革を遂げたことを市場に示す重要な転換点となった。
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