Spirituals(黒人霊歌)とは
Spirituals (or Negro spirituals) are generally Christian songs that were created by African slaves in the United States. Spirituals were originally an oral tradition that imparted Christian values while also describing the hardships of slavery. Although spirituals were originally unaccompanied monophonic (unison) songs, they are best known today in harmonized choral arrangements. This historic group of uniquely American songs is now recognized as a distinct genre of music.
【抄訳】
黒人霊歌とは、アメリカの黒人奴隷によって作られたキリスト教賛歌。もともとは、伝統的な口頭歌謡にキリスト教的な価値観が加えられたもので、奴隷生活の厳しさもまた一方で表現された。元来は、伴奏を伴わない単声の歌であったが、現在では、調和合唱の曲として知られている。
Spiritualsの歴史
Spiritualsは、黒人奴隷たちの間で、口頭で伝えられた民謡に、キリスト教の讃美歌の影響が加わってできた宗教音楽。日本語では、黒人霊歌と訳されている。だが、必ずしもキリスト教に関わるものだけを指すのものではないようだ。生活苦や悲哀を歌ったものも多い。
形式としては、当初は楽器を用いない単声のアカペラで歌われ、集団での応答(コール・アンド・レスポンス)やリズム感のある反復が特徴であった。
この音楽誕生の背景には、当時の黒人奴隷たちの置かれた厳しい生活がある。
楽器を手に入れることができなかったため、自らの歌声のみを頼りとした。謡われた内容も、自らの厳しい境遇からの救いを求めたものが多く、悲しい歴史を背負っている。現代のGospel Musicは、この黒人霊歌を起源として発展していった。
動画は、Louis Armstrongによる”When The Saints Go Marching In”。この曲は、今では、Jazz Bandの名曲として知られているが、もともとは、19世紀末ごろから知られている最も古い黒人霊歌のひとつ。
ゴスペル音楽の起源
黒人霊歌(Spirituals)は、やがて時代とともに変化し、20世紀初頭には「ゴスペル・ミュージック(Gospel Music)」として新たな形で発展していく。ゴスペルは黒人教会を中心に発展し、ピアノやオルガン、ドラムなどの伴奏を取り入れ、複数声部の合唱や力強いリードボーカルを特徴とするようになった。
ゴスペルの歌詞には、依然として神への信仰や救いが中心に据えられているが、それに加えて、個人の証(テスティモニー)や共同体の喜び、希望の表現なども含まれるようになる。現代においては、黒人霊歌をルーツとしながらも、ジャズやブルース、ソウルなどの音楽的要素を取り込み、広く一般にも親しまれる音楽ジャンルとなっている。
黒人霊歌からゴスペルへ
1. 歴史的背景と時代区分
黒人霊歌(Spirituals)
18世紀後半から19世紀にかけて、アメリカの奴隷制時代に黒人奴隷によって自然発生的に生まれた音楽。
主にアカペラ(無伴奏)で歌われ、即興性が高く、口頭で受け継がれていた。
労働歌(フィールド・ホラー)や宗教儀式と密接に関わりながら、自由と救済を象徴する歌が多く歌われた。
ゴスペル(Gospel Music)
20世紀初頭のアメリカで、特に黒人教会を中心に発展した宗教音楽。
ピアノ、オルガン、ドラムなどの伴奏を伴い、楽譜や録音によって形式が定められていった。
黒人霊歌の宗教的情熱を受け継ぎつつも、より個人の信仰や喜び、感謝を表現する方向へと発展した。
2. 音楽的特徴
特徴 | 黒人霊歌(Spirituals) | ゴスペル(Gospel) |
---|---|---|
時代 | 18〜19世紀 | 20世紀以降(特に1930年代〜) |
歌唱形式 | 無伴奏・単声 | 伴奏あり・多声(合唱、ソロと応答) |
リズム・構成 | ゆるやか、瞑想的なものが多い | 明快なビート、感情的な高揚を重視 |
歌詞内容 | 救済・自由への願い・嘆き | 信仰の喜び・証(testimony)・希望 |
伝播手段 | 口承、即興 | 楽譜・録音による普及 |
3. 宗教的・社会的機能の違い
- 黒人霊歌は、抑圧された環境における精神的な支えであり、集団の連帯や心の逃避所として機能していた。
- ゴスペルは、信仰共同体の喜びの表現手段であり、個人の「証し(testimony)」としての役割を担っていた。教会の礼拝の中で重要な役割を果たした。
代表的な黒人霊歌(Spirituals)
黒人霊歌は、個人名義の作曲者が不明なものが多く、民謡的な性格を持っている。以下はその中でも特に知られている曲。
- “Swing Low, Sweet Chariot”
天国(自由)への願望を象徴する歌。奴隷解放運動の暗号としても使われたと言われる。 - “Go Down, Moses”
モーセによる出エジプト記を通して、抑圧からの解放を象徴する歌。「Let my people go(我が民を行かせよ)」というリフレインが印象的。 - “Sometimes I Feel Like a Motherless Child”
孤独や喪失感を静かに表現した名曲。多くのジャズ・アーティストにもカバーされている。 - “Nobody Knows the Trouble I’ve Seen”
奴隷としての苦悩をしみじみと語る、深い精神的メッセージを持った歌。
黒人霊歌の紹介者・再構成者
- ポール・ロブソン(Paul Robeson)
黒人霊歌を世界に紹介したバス歌手で、民権活動家でもある。彼の歌声は、音楽だけでなく社会正義の象徴として評価された。
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