戦後の食文化は豊かになったのか – 中村靖彦『コンビニ ファミレス 回転寿司』

読書案内

中村靖彦『コンビニ ファミレス 回転寿司』(1998)

巨大な食品産業

 1996年、国内で生産された食糧原材料は12.4兆円。内訳としては、農業総産出額が10.2兆円、水産が2.2兆円。
 一方、食品製造業の総産出額は、31兆円。さらに外食などを含めて消費者が食に支出した総額は70兆円。
 1997年にテレビ広告費の総額が約2兆円。そのうち食分野の広告が14.5%、化粧品を抑えて1位となっている。

 こうして数字を見せられると、改めて食品産業の巨大さに驚かされる。しかし、これって日本の食文化が豊かになったことを意味するんだろうか?食文化の資本主義化が進んだことだけは、間違いなさそうだが。。。

 コンビニ、ファミレス、回転寿司。今ではすっかり定着し、どこにでも見かけるようになった。というより日本中を席巻した。なんで日本はここまで巨大資本による画一的食文化が広まったのだろう?ここまで地域性のなくなった国というのは、ちょっと他国では思いつかない。

日本の食料自給率

 中村靖彦氏の『コンビニ ファミレス 回転寿司』は、今の日本の食産業が抱える問題を多面的に論じた本だ。話題は多岐にわたるが、決して現状を否定的に見ているだけではなく、新しい近年の傾向も見据えつつ、より良い食文化のための提言も行っている。

 しかし、今の日本の食産業を考える上で、決して外せないものは、食料自給率だろう。本書でもこの点は日本の課題として取り上げられている。

 97年の日本人のカロリー自給率は42%。
 農林水産省毎年公表している供給カロリーは、1996年に一人当たり2651キロカロリー。だが、厚生省か実際に摂取しているカロリーは同年で一人当たり2002キロカロリー。およそ650キロカロリー、25%程度が破棄されていると推計される。
 これは、「コンビニ、ファミレス、回転寿司」といった巨大資本による食品企業が、大量生産、大量破棄を前提とした経営を行っているためだ。
 たとえば、コンビニ企業一社から廃棄されるご飯量は年間3500トン、5万人が1年に食べる量と同じ。
 コンビニ店員が消費期限の過ぎた食品を棚から回収している姿を見たことがある人は多いだろう。回転寿司では、皿がレーンを3周したら捨てるのが普通だ。自分は回転寿司に行った際、目の前でポンポン捨てている姿を見て、食べる気が失せてしまった。
 大資本が経営する食関連の企業は、マーケティングと効率化を考慮して、食品を破棄した方が利益が増大する、という奇妙な仕組みを作り上げている。
 これって何かがおかしいと思いませんか?

 コンビニ、ファミレス、回転寿司――
 確かに便利な世の中になった。だが、これが今の日本を代表する食文化で本当にいいのだろうか。。。🤔