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発達障害と知的障害を正しく理解する:特性・診断・支援のちがい

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発達障害と知的障害の違いと支援の考え方

 発達障害と知的障害は、いずれも社会生活を送るうえで「生きづらさ」を伴うという共通点がありますが、それぞれの特性や支援の在り方には明確な違いがあります。本稿では両者の違いを整理し、併発する場合の支援の優先順位についても解説します。

1. 知的障害について

■ 定義と診断基準

 知的障害は、主に以下の3つの基準によって診断されます。

  1. 知的機能の障害:知能検査(IQテスト)でIQ70未満と判断される(地域によっては75未満の場合もある)。IQの平均は100であり、一般的にはIQ85〜115が平均域とされます。
  2. 発症時期:障害が発達期(およそ18歳まで、アメリカ知的発達障害協会AAIDDの最新版では22歳まで)に生じている。
  3. 適応行動の困難:日常生活・社会生活において著しい支障がある(例:学業不振、対人関係の困難、就労の継続が困難など)。

■ 発達の特性

 知的障害は、特定の分野に限った遅れではなく、全体的に発達がゆっくり進むことが特徴です。年齢相応の能力が得られにくいため、定型発達の集団の中で困難が生じやすくなります。

■ 主な困難の例

  • 学習の理解や習得が遅れる
  • 対人関係の構築が難しい
  • 臨機応変な対応が苦手
  • 感情コントロールが難しい
  • 注意力が散漫
  • 後先を考えた行動がとりにくい

■ 精神年齢の概念

 知能検査結果をもとに「精神年齢」が用いられることもあります。たとえば、IQ70の10歳児であれば、精神年齢はおおよそ7歳と見なされます。軽度知的障害では、成人後も精神年齢が12歳程度で止まる場合があります。

■ 重症度による分類

 知的障害は以下の4段階に分類されます。

程度IQ範囲精神年齢の目安
軽度50〜69約9〜12歳
中等度35〜49約6〜9歳
重度20〜34約3〜6歳
最重度20未満約3歳以下

 知的障害者の約85%は軽度知的障害に分類されます。

■ 支援と医療

 知的障害に対しては、医学的治療よりも教育的・福祉的支援が重視されます。たとえば、特別支援教育や福祉サービスなどが中心です。行政からの支援を受けるには療育手帳が必要ですが、IQ70〜84の境界知能の場合は対象外となり、支援が受けにくいケースもあります。

2. 発達障害について

■ 定義と発達の特性

 発達障害は「発達凸凹(でこぼこ)」とも呼ばれ、能力の得意・不得意の差が極端に大きいことが特徴です。ある分野では高い能力を発揮する一方で、別の分野では著しく困難を抱えることがあります。

■ 主な困難の例

  • こだわりや不注意などの行動の特性
  • 対人コミュニケーションの難しさ
  • 学習に偏りがある(特に読み書き・計算に限定した学習障害など)
  • 想像力や抽象的思考の乏しさ
  • 興味のあることには高い集中力を示すが、それ以外には無関心

■ 知能との関係

 発達障害は、知的障害を伴う場合もありますが、必ずしもそうではありません。むしろIQが高い場合でも発達障害と診断されることがあり、特定の分野で高い能力を発揮するケース(例:研究職や技術職)も見られます。学習障害(LD)は発達障害に含まれますが、知能全体には問題がないと定義されています。

■ 支援と医療

 発達障害に対しては、継続的な医療的サポートや療育が必要となることが多く、医療との関わりが比較的深いことが特徴です。診断を受けたうえで、心理療法や行動療法、薬物療法が行われる場合もあります。


知的障害と発達障害の違い

特性知的障害発達障害
知能指数の水準IQ70未満が基準(全体的に知能水準が低い)知的障害を伴わない場合が多く、IQが高いこともある
能力の特性全体的に発達がゆっくり進む発達凸凹」と呼ばれ、得意なものと苦手なものの差が大きい
困難の範囲全体的な知的機能の遅れから、社会生活全般に困難が生じる特定の分野(行動、コミュニケーション、学習など)に困難が生じる

併発と支援の優先順位

 発達障害と知的障害は併発することもあります。その場合、日常生活や社会参加における困難の多くが知的な制約に起因することが多いため、支援の優先順位としてはまず知的障害への対応が優先されるとされています。

 知的障害向けに構築された支援プログラムの多くは、発達障害の特性にも応用可能な部分があるため、併発時にも一定の効果が期待されます。

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