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【仮想通貨】ビットコインは本当にインフレを起こさないのか?

ビットコイン 投資・市況
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再び注目される仮想通貨

 ビットコインの価格が急騰して、再び仮想通貨が大きな注目を集めている。

 今年に入って、めまぐるしい値動きが続いている。完全に投機の対象となってしまった感がある。これだけ価格が不安定だと実際の決済にはほとんど使えないだろう。

 実際の決済としては使いものにならない貨幣———これが今後一般に浸透していく可能性は本当にあるのだろうか。実際に広く使われるようになるためには、価格の安定が必須だ。しかし、何の裏付けも持たない仮想通貨が、その価値をどうやって保証するんだろうか?

発行数の上限という仕組み

 ビットコインは、一般に「インフレを起こさない」と言われている。それは、通貨の発行上限があらかじめ決められているからだ。発行ペースはおよそ4年ごとに半減していき、最終的に発行上限は2,100万BTCに達した時点で新規発行が停止する。この仕組みは「半減期(Halving)」と呼ばれ、現在のスケジュールでは、2025年頃にはその約95%以上が発行済みになると予想されている。

 法定通貨の場合、政府や中央銀行が通貨の発行量をコントロールすることができる。これにより、政策的意図に基づいて貨幣の購買力を調整する、つまりインフレやデフレをある程度コントロールできる。通貨の価値は、最終的に国家(の信用)によって裏付けられているわけだ。(厳密には「価値を決めている」とまでは言えないが、価格の方向性に影響を与えているのは確かである。)

 では、ビットコインの場合はどうか。

 ビットコインの発行は、特定の機関や主体によって管理されていない。あらかじめ定められたプログラムに従って、自動的に発行されている。そしてその総発行量には上限(2,100万BTC)があり、この情報はすべての参加者に事前に知らされている。

 このような透明性と上限設定があるため、ビットコインは「インフレを起こしにくい」とされる。需要が増えれば価格が上がり、減れば下がる——このような需給バランスによって価値が決まるため、通貨価値の希薄化(インフレ)は起こりにくいという理屈だ。つまり、通貨発行に上限があること自体が、価値の裏付けとして機能しているとも言える。


 なるほど……。

 ……ん!?

 でも、ちょっと待って、それって本当だろうか?

 ビットコインが広く普及し、仮想通貨の利用者が世界的に増えれば、当然ながら市場全体の取引量も増加する。それに対応して流通量(使えるBTCの「数」)が増えなければ、取引が滞るのではないか? 価格がひたすら上昇し続けるだけでは、実用性が失われてしまう。

 つまり、発行量を増やせないなら、どうやって取引の柔軟性を保つのか?

 その答えは、「取引単位の細分化」にある。

 たとえば、以下のようにビットコインの取引単位を小さく分けていけばよい。

  • 0.1 BTC
  • 0.01 BTC
  • 0.001 BTC
  • 0.00000001 BTC … など

 このように単位を細かくしていけば、実際の流通の柔軟性を確保できる。つまり、通貨の絶対量が変わらなくても、使用可能な「単位の数」は増えるわけだ。

 ……んんっ!?

 でもこれ、発行量を増やしてるのと“同じ効果”じゃないか!?

 実際、取引単位を細分化することは、経済活動に必要な「流動性」を確保する手段であり、ある意味で“実質的な発行量の拡大”と似た役割を果たしている。

 この目的のために、ビットコインにはあらかじめ非常に小さな単位が定義されている。それが 「Satoshi(サトシ)」 という単位である。名前の由来は、ビットコインの創始者とされるサトシ・ナカモト氏にちなむ。

  • 1 Satoshi = 0.00000001 BTC

 なんと、1億分の1ビットコインだ!
(ゼロがいくつも並んで、目がチカチカする!)

 現在のところ、この1 Satoshiがビットコインの最小単位とされている。

 つまり、「ビットコインはインフレを起こさない」と言われるが、取引単位の細分化という形で“伸びしろ”があらかじめ組み込まれている。完全に固定された硬直的な通貨ではなく、ある程度の柔軟性を持つ設計になっているのだ。

需要に応じて決まる貨幣価値

 「1億分の1」という単位は、なんだかふざけているようにも思えるが、要するに、極端な需要の増加に対応できるよう、最初から設計されているということだ。

 つまり——

 通貨の発行上限が定められているとはいえ、実質的には通貨の供給量(取引可能な単位の数)は細分化によって増えていく。その結果、場合によっては価値の希薄化(インフレ的現象)も起こり得るというわけだ。

 もちろん、現時点で1 Satoshi(= 0.00000001 BTC)単位で取引が一般的に行われているわけではない。多くの取引所では、最小取引単位は 0.001 BTC〜0.0001 BTC 程度に設定されている。

 しかし今後、ビットコインへの需要がさらに高まり、より少額での購入ニーズが増えれば、0.0001 BTC以下の単位を扱う取引所も登場してくるだろう。

 そして、さらに遠い将来。もしもビットコインが世界的に広く普及し、1 Satoshi ですら十分な流動性を確保できない状況になったとしたら、どうなるだろうか?

 おそらく、1 Satoshi をさらに細かく分けた新たな単位が登場する。

 たとえば——

  • 0.00000001 Satoshi = 1 Pikachu

 ……といった、新しい通貨単位が登場しても不思議ではない。

 要するに——絶対に安定する通貨など、この世に存在しない。

 すべての貨幣の価値は、市場における 需要と供給の関係によって決まる。
 これは法定通貨であろうと、仮想通貨であろうと、例外はない。

 たとえビットコインが、どれだけ理論的に優れた仕組みを持っていようとも、その価格は市場原理に従って決まる。そして価格が上下する限り、「絶対的な価値の安定」などというものは幻想に過ぎない。

 ビットコインが本格的に一般流通し、その「実質的な発行量」が増加し、結果として価値が希薄化する未来が来たとき——
 そのとき、果たしてそれに見合う価格を維持しているのかどうか。

 それはもはや、「天のみぞ知る」話なのである。

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