驚異的な発展を続けるFacebookの画像解析技術
個人情報の取り扱いをめぐって物議が絶えないFacebookだが、またなにやら波紋を呼びそうな記事を見つけた。2015年11月の記事↓
フェイスブック AIで「写真に何が写っているのか」を判別
フェイスブックは、人工知能(AI)の研究で成果を上げており、ユーザーの好みに、従来以上に適合するニュースフィードの実現の動きを進めている。
同社は11月3日、写真の中の物体や動きを認識できるシステムを開発したと発表した。このシステムは業界の標準と比べて判別のスピードが30%速く、既存の仕組みの10分の1の手間で学習を行うという。
また、写真に何が写っているのかをデバイスに答えさせる新しい機能ビジュアルQ&A(VQA)も備えている。この機能では、質問を読んで理解し回答することができる同社の自然言語処理技術Memory Networksが使われている。
この技術はユーザーによりマッチした画像、投稿、そして広告の提供を可能にするほか、目の不自由なユーザーにとっても価値の高い機能になる可能性を秘めている。同社はさらに、メッセンジャーに組み込まれているパーソナルアシスタントツールMの強化にもAIを使っている。
顔を認識するだけではなく、背景すべての対象物にまで認識機能が広がっている。
Facebookに投稿した写真は、自動解析され、画像に含まれるものは何かをAIによって判別する。
例えば、公園の写真をupすると、「花壇」「ベンチ」「木」「自然」など、そこに写っている対象物が解析されて、その名称がタグ付けされる。
Facebookが自動顔認識機能を開始したときは、さまざまなメディアに取り上げられ、多方面で物議をかもした。下の記事は、Facebookが2011年に世界各国で自動タグ付け機能を開始した際のものだ。
フェイスブックの顔認識機能が物議
米フェイスブック(Facebook)は今週、世界各国への導入を開始した顔認識機能「Tag Suggestions」をめぐり、非難の矢面に立っている。
この機能は、顔認識ソフトを使って、新たに投稿された写真をこれまでにタグをつけられた写真と比較し、その人物の名前を割り出すとともにタグ付けを提案するというもの。
米国では昨年12月に先行導入されていたが、今週コンピューターセキュリティ対策企業ソフォス(Sophos)のグラハム・クルーリー(Graham Cluley)氏が自身のブログで疑問を投げかけたことから、再び注目が集まっている。
クルーリー氏は、機能がユーザーへの告知なしに導入されたこと、タグ付けがユーザーの承認なしに自動的に有効になることを問題視している。
自動的に人の顔を認識し抽出するだけでなく、それが誰であるかを自動的に推測するまでになった。この時は、さまざまな議論が上がっただけでなく、利用者からも批判が相次いだ。
そして、この機能はさらに強化されていく。2014年3月の記事↓
Facebook、“ほぼ人間レベル”の顔認識技術「DeepFace」を発表
米Facebookの人工知能(AI)ラボが、顔認識技術「DeepFace」に関する論文を公開した。
この技術は、ディープラーニング(深層学習)と呼ばれるニューラルネットワーク技術を採用している。Facebookは昨年12月、人工知能研究ラボを立ち上げ、深層学習を研究するヤン・ルカン教授を所長に迎えた。
DeepFaceの2つの画像の顔の識別精度は97.25%で、人間(97.53%)とほぼ互角という。従来の顔認識技術より25%精度が上がったとしている。
実験には、公開されている画像データベースやFacebookにアップロードされている4030人の440万点の画像、米GoogleのYouTubeの動画内の顔データを集めたデータベースを利用した。
DeepFaceは画像内の顔から3Dモデリング技術で正面を向いた顔の画像を作り、これを1億2000万以上のパラメータを持つマルチレイヤーのデータにしてニューラルネットワークで共通ポイントを解析する。
なんと、97.25%の精度だ!
Facebookのこの自動顔認識機能について肯定的な意見は聞いたことがない。それにもかかわらず、人工知能研究ラボを立ち上げ、Facebookは更なる開発を続けているようだ。顔認識機能の精度がほぼ人間の能力に匹敵するまでになったというのは、かなり驚異的な技術進歩だ。
この技術は、取り込んだ正面画像から角度を付けた画像を推測で自動作成するというもの。将来的に、一方向から撮られた写真でも、写っていない他の角度からの画像を自動推測し、全体像を描くことも可能になるだろう。
この技術を使えば、撮られた写真に人の顔が少しでも映っていれば、写っていない情報も自動で復元し、顔認識機能でその人が誰かを推測することが出来るということになる。
そして、今回の冒頭の記事で、それが人間の顔以外にも広げられていることが分かった。
今後、この技術はどこまで進んでいくんだろう?そして、どのような利用のされ方をしていくのだろう?
個人情報の管理と企業の新たな責任
AIを利用した顔認識の機能は、単に「技術の問題」として扱われるべきものではない。問題はFacebook上のことではない。この技術が将来どのように利用されていくのか、どの分野に流用されていくのか、ということの方がはるかに重要だ。
Facebookが立ち上げたという人工知能研究ラボは、おそらく、というか確実にその他の技術の研究も行っているはずだ。
・この研究機関は、将来、他の企業や政府機関に売却される可能性はあるのか。
・技術の流出が悪意ある人物の手に渡らないという保証はどれほどあるのか。
等々、情報管理に関して、Facebookは重大な責任を負うことになる。
さらにこの技術が、今後どのような利用のされ方をしていくのか、Facebookには説明責任があるはずだ。
・監視カメラへの応用
・個人の行動傾向の把握によるマーケティングへの利用
等々、集めた個人情報を利用できる分野は、さまざまにある。
人類の歴史を見る限り、一度開発された技術は、遅かれ早かれ、さまざまな分野へと応用されていく。
Facebookが膨大な資金を投じて、このような技術開発を行っているのは、単にFacebook利用者の利便性を高めようとしているからではなく、この技術が将来的に多様な用途で活用可能だからだろう。
Facebookの顔認証といい、iPoneの指紋認証といい、個人を特定する膨大な情報を一企業が収集することが可能な時代になった。こうした情報を取り扱う企業は、単なる営利企業としての立場を超えた重い社会的責任があるはずだ。これは、かつての企業にはなかった新たな時代の新しい責任だ。
もちろんこうした技術の進歩から、すぐに監視社会の到来とか言うつもりはないし、個人情報が商業利用、あるいは政治利用されるとかいった批判をするも気もないが、一企業が大きな責任を担う時代になったということだけは最大限強調しておきたい。
しかし、まだまだ若いザッカーバーグに率いられているFacebookは、その責任をどこまで自覚しているんだろうか。