外国人労働者の受け入れをめぐって──
外国人労働者をほんとうに差別しているのは誰か?(全4回)第1回
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外国人労働者が増えると日本人の賃金は下がるのか?
外国人労働者が増えると日本人の賃金が下がる──
最近、ネット上などでこうした主張をよく見かけるようになった。外国人労働者を日本人労働者の「脅威」とみなす声が目立つ。
確かに、日本は少子高齢化による深刻な人手不足に直面しており、外国人労働者の受け入れが急速に拡大している。2025年10月末時点で外国人労働者数は約257万人(厚生労働省発表)と過去最多を更新し、雇用者全体の約4%を占めるまでになった。この変化の速さから不安や警戒感が広がっている。
しかし、この問題は感情論だけで判断できるほど単純ではない。統計データと実証研究に基づいた冷静な分析が必要だ。
現時点では「賃金全体の押し下げ」の明確な証拠はない
現在の規模(雇用者の約4%)を考えると、外国人労働者の増加が日本全体の賃金水準を大きく押し下げているとは言い難い。多くの統計分析・実証研究でも、「外国人労働者の増加が全国的な賃金低下を明確に引き起こしている」という強い証拠はほとんど見つかっていない。
賃金の伸び悩みをすぐに外国人労働者のせいにするのは、因果関係の観点から慎重であるべきだ。
もっとも、将来の懸念がまったく存在しないわけではない。今後受け入れがさらに拡大し、労働供給が大きく増えれば、賃金に下方圧力がかかる可能性はある。現在の日本では人手不足の方が深刻であるため、欧米で見られるような「外国人労働者が雇用を奪っている」という議論はまだ主流ではない。しかし、受け入れ規模が大きくなれば、そうした声が強まる可能性は否定できない。
とはいえ、これは将来の受け入れ規模や制度設計に左右される問題であり、少なくとも現時点で日本が直面している本質的な課題とは言い難い。
本当の問題は「なぜ外国人が低賃金で雇われるのか」
ここで、問いの立て方そのものを変える必要がある。
これまでの議論では、しばしば
「外国人労働者が賃金を下げているのか」
「外国人労働者が日本人の職を奪っているのか」
という形で問題が語られてきた。
しかし、現在の日本の状況を踏まえるなら、本当に問うべきなのはそこではない。むしろ重要なのは、
「なぜ外国人労働者は低賃金で雇われやすいのか」
という問いだ。
つまり問題の核心は、外国人労働者の存在そのものではなく、外国人が低賃金で働くことを当然の前提と見なしている構造がどのように生まれているのか、という点にある。
「日本より生活水準の低い国が多いから」という単純な経済原理だけで説明すると、根本的な構造が見えなくなる。日本には、外国人労働者を安価な労働力として固定化してしまう制度的な仕組みが存在してきたからだ。
その最たる例が技能実習制度である。本来は技術移転を通じた国際貢献を目的とした制度だったが、実態としては低賃金労働力の確保手段として機能してきた側面が強い。
- 実習生は原則として職場を自由に変えられない
- 言語・制度理解を助ける十分な教育投資がなされていない
- その結果、労働条件に問題があっても声を上げにくい
これにより、長時間労働、低賃金、賃金未払い、パスポート取り上げなどの違法行為が繰り返し報告されてきた。
賃金を下げているのは「外国人」ではなく「制度・慣行」
視点を変えてみよう。
- 外国人労働者が日本人の賃金を下げているのか?
- それとも、外国人を安価に働かせる仕組みそのものが賃金を押し下げているのか?
企業が外国人を日本人と同じ条件・同じ賃金体系で雇用するなら、「外国人だから賃金が下がる」という構図は成立しない。問題が生じるのは、外国人だけを低い待遇で働かせる仕組みが存在するときだ。
つまり、賃金を下げている主体は外国人そのものではなく、外国人を「安価な労働力」として扱う制度や雇用慣行、そして企業の方である。
ところが、「外国人が賃金を下げている」という言説は、皮肉にもこの構造を隠してしまう。批判の矛先が外国人労働者に向かうことで、低賃金を生み出している制度や企業の側が批判の対象から外れてしまうのだ。
真に問われるべきは「外国人を受け入れるかどうか」ではない
本当に問われるべきは、
「外国人を受け入れるかどうか」
ではなく
「外国人をどのような条件で働かせるのか」
である。
もし外国人が低賃金・使い捨ての存在として扱われ続ければ、その影響は必ず日本人労働者にも及ぶ。安い労働力がある限り、企業はそこに依存するようになるからだ。
逆に、外国人であれ日本人であれ、同じ仕事には同じ賃金という原則が徹底されれば、賃金に関する多くの不安は解消されるだろう。
外国人労働者は「賃金を下げる存在」ではなく「最も弱い立場の労働者」
外国人労働者はしばしば「賃金を下げる存在」として語られるが、実際には彼ら自身が最も弱い立場に置かれているケースも少なくない。低賃金・劣悪な労働条件にさらされ、制度的保護も手薄だ。そうした人々を非難することは、問題の本質から目をそらす行為に他ならない。



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