ソニー業績回復
時価総額の回復
- ソニーの時価総額が5兆円台を回復(2008年以来)
- 終値は4%高の3,989円で、時価総額は5兆411億円
- 同業の三菱電機やパナソニックが3兆円台にとどまる中で、ソニーの好調ぶりが際立つ
好調な業績見通し
- 2018年3月期の営業利益は前期比73%増の5,000億円を見込む
→ これは1998年の最高益(5,257億円)に次ぐ水準 - 純利益は前期の3.5倍、2,550億円に回復する見通し
- 売上高も前期比5.2%増の8兆円を予想
各事業の見通し
- ゲーム&ネットワークサービス(G&NS):15%増の1兆8,900億円
→ 「PS4」関連のソフト販売が引き続き好調 - 半導体事業:14%増の8,800億円
→ スマートフォンのカメラなどに搭載するCMOS画像センサーが好調
→ 熊本地震からの復旧が進む - 映画事業:減損を出したが、13%増の1兆200億円に回復見通し
外部要因の追い風
- フランス大統領選で親EU派のマクロン氏が勝利
→ ソニーの欧州売上は、全体の2割を占める
→ 欧州でのリスクが後退し、ソニーの欧州売上への安心感から買いが集まる
中期目標とアナリスト評価
- ソニーは中期目標として「ROE10%以上、営業利益5,000億円以上」を掲げており、達成が見込まれている
- 一部アナリストは「予想は保守的で、6,000億円まで達する可能性も」と見ている
PS4とゲーム事業
- PS4は販売開始から3年半が経ち、今期の販売台数は1,800万台を見込む(前期は2,000万台)
- 吉田CFOは「収穫期を迎えている」と評価
前期(2017年3月期)の結果
- 純利益:50%減の733億円
- 営業利益:1.9%減の2,887億円
- 売上高:6.2%減の7兆6,033億円
- 減損や熊本地震による半導体工場被害の影響が業績に響いたが、回復傾向
総括:
ソニーはエレクトロニクスや半導体、ゲームなど主要事業の回復により、業績と株価が急回復。中期経営目標の達成も現実味を帯び、株式市場でも高く評価されている。
2008年以降の経営低迷
2008年以降、経営が低迷していた主な理由には、以下のように複数の要因が重なったためです。
エレクトロニクス事業の競争力低下
- テレビ事業の不振
→ 薄型テレビ市場で韓国のサムスンやLGとの価格競争に敗れ、赤字が続いた
→ 画質など技術面では優れていても、コスト競争力がなかった - スマートフォン市場への出遅れ
→ iPhoneやAndroidの登場により、ソニーの携帯電話(ソニー・エリクソン)は存在感を失う
→ 高価格・高機能に偏った商品設計が一般消費者に合わなかった
組織の硬直化と経営判断の遅れ
- 多角化による組織の複雑化
→ 映画・音楽・ゲーム・金融など多くの事業を持つが、事業間の連携がうまく取れていなかった - イノベーションの鈍化
→ かつての「ウォークマン」のような革新的なヒット商品が出ず、アップルにブランド力でも後れを取る
円高と世界金融危機の影響(2008年~)
- リーマン・ショック後の世界的な需要減退
→ 家電・AV機器の売れ行きが悪化 - 円高の進行
→ 輸出型企業として海外での価格競争力が低下、利益が目減り
不採算事業の整理が遅れた
- 赤字が続くテレビ事業やPC(VAIO)事業の撤退・再編が遅かった
- VAIOは2014年にようやく売却、テレビ事業も分社化されるまでに時間がかかった
半導体など基幹技術への投資不足と災害の影響
- CMOSセンサーなど半導体技術に当初は十分なリソースが集中されていなかった
- 2016年の熊本地震では主要な半導体工場が被災し、業績に大きな打撃を受けた
2010年代後半からの復活
- 構造改革の成果(不採算事業の整理、収益性重視)
- ゲーム(PS4)や音楽、映画、CMOSイメージセンサー事業が牽引
- 財務体質改善と企業ブランド再評価
まとめ:
ソニーの経営低迷は、競争力の低下・判断の遅さ・グローバルな環境変化が複合的に影響したもので、特に「高コスト体質のまま競争に取り残されたこと」が大きな要因です。再建には時間を要しましたが、事業の選択と集中による再構築によって、現在は回復へと軌道に乗り始めています。
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