社会保障格差とは何か?
日本の社会保障制度は、本来すべての国民が「等しく守られる」ことを目的として整備されてきました。病気や失業、老後の不安を社会全体で支える仕組み——それが「社会保障」の本質のはずです。
ところが今の日本では、雇用形態の違いによって、受けられる保障の中身に大きな格差が生じています。
正社員だけが「手厚い保障」を受けられる現実
たとえば、厚生年金、健康保険、雇用保険、労災保険といった制度は、基本的に正規雇用を前提に設計されています。
正社員であれば、企業が保険料の半分を負担し、将来の年金受給額にも有利に働きます。しかし、非正規雇用、特にパート・アルバイト・契約社員・派遣社員などは、勤務時間や雇用期間の条件を満たさなければ、そもそも加入すらできないことが多いのです。
同じように働いていても、「社会保険に入れない」「失業手当が出ない」「将来の年金が著しく少ない」
——こうした差が生じるのは、明らかに制度上の不公平です。
社会保障は「企業の裁量」ではない
現在の制度では、社会保険の適用や福利厚生の多くが「企業単位」で決定されがちです。つまり、どこに就職するか、どんな形で働くかによって、受けられる保障が変わってしまう。
これは本来の社会保障の理念、「国が責任をもって国民の生活を保障する」という考え方から大きく逸脱しています。
「働き方改革」の裏で広がる分断
政府は近年、「働き方改革」や「同一労働同一賃金」を掲げてきましたが、現場の実態はそれとは逆行しています。非正規雇用者は今も増加傾向にあり、彼らが置かれている保障環境は正規雇用者と比べて極めて脆弱です。
収入だけでなく、保険や年金制度の格差によって、将来への不安や格差の固定化が進行しています。
社会保障制度に「格差」があってはならない
社会保障は、人間が生きていくための最低限の安心を保障するための仕組みです。そこに「企業」「働き方」「雇用形態」といった要素で格差が生まれるのは、本来あってはならないはずです。
「どこで働くか」ではなく、「日本に生きているかどうか」で等しく保障される社会保障制度こそが必要なのです。
問題提起まとめ
- 現行の社会保障制度は、正規雇用を前提に設計されており、非正規雇用者には不利。
- 社会保障の有無が企業や雇用形態によって左右されるのは、制度設計として本質的に間違っている。
- 国が責任をもって、雇用形態に関わらず等しく保障する制度改革が急務。
「本来の社会保障とは何か」を改めて問い直すことが、いま必要です。
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