地政学リスクで日本円が買われるワケ – 有事の円買いはなぜ起こる?

有事の円買いはなぜ起こる?

 北朝鮮情勢がますます緊迫している。金正恩政権は、ミサイル発射と核実験を続けて、アメリカおよび周辺国を挑発し続けている。それに対し、トランプは先制攻撃も辞さない構えだ。

 そうした地政学リスクに備えて、海外投資家が日本の株式市場から資金を引き上げつつある。
 しかし、一方で日本円は買われて、円高が進んでいる。

 2011年の東日本大震災の際も、原発事故の影響などで日本経済が混乱すると見られていたのに、なぜか円高が進んだ。

 海外で有事が起こると、安全資産としての円が買われ、日本で有事が起こると、やっぱり、円が買われる。何が起こっても、円高が進む。

 何なんだ、これ?

 そこで、理由をいろいろと調べてみた。

円キャリー取引の解消

 円資金を借り入れて、その資金で外貨や金融資産を購入することを円キャリー取引という。

 国際的にみて円が低金利の際に借入れて、円を売ってより高い利回りとなる外国の通貨、あるいは外国の通貨建ての株式、債券などで運用して「利ざや」を稼ぐ行為は、円キャリー取引と呼ばれている。

円キャリー取引 – Wikipedia

 この円キャリー取引を解消(手仕舞い)させようとする際に、円の買戻しが行われるので、これが円高の要因になる。
 だが、この円キャリー取引の解消が一斉に進む場面というのは、今後、円高が進む、あるいは、日本の金利が上昇すると予想される時だ。地政学リスクでこのような予想が立つのだろうか?逆じゃないんだろうか?
 いまいち納得のいかない議論だ。

損害保険会社による保証金準備

 日本の損害保険会社が、保険金支払いの準備のために、海外資産を売却して、円を買い戻し、円資金を準備する。
 この説は、東日本大震災の時の円高の説明として、よく言われたやつだ。
しかし、今回の北朝鮮リスクでは、まだ日本に被害は起きていない。今の段階で、損保各社が、海外資産の売却を進めるとは思えない。
 それに、東日本大震災の際も、手元資金がショートするほどではなかったらしいし、為替を変動させるほどの金額が動いたとも思えない。

日本の巨大な海外資産

 日本は外貨建てで海外に巨額の資産を築いている。個人、企業、政府を合わせた日本の対外純資産は、2015年の統計で339兆円にものぼる。

参考
本邦対外資産負債残高統計表一覧 – 財務省

 これが、日本の有事の際に、日本円に戻す動きが活性化するというものだ。

 しかーし、これも金持ちの心理からしたら、逆のように思える。日本が有事で危険な状態になったら、金持ちは余計に資産を海外に逃がそうとするんじゃないだろうか?
 グローバル化の時代だ。企業だって、国内投資を控えて、海外投資に振り向けるんじゃないだろうか。
 逃げようがない日本政府だけが、対外資産を円に戻すかもしれないが、政府の場合は国際政治に影響を与えるので、為替に影響を与えるほどの資金を移動させることは、安易にはできない。

結論

 つまり、結論をいうと。。。

 結局、よくわからん。

 さまざまな思惑の先を見越して、機関投資家が、円買いを進めることが、さらなる円買いを呼ぶのだろうが、結局、為替を動かしているのは、そうした思惑であって、実需は何でもいいのかもしれない。
 円の需要があると見込んだ機関投資家が円買いを仕掛けるのだろうが、その円の需要って、そもそも何?って言われると、結局、さまざまな説が入り乱れて、よく分からなくなる。

 まぁ、そもそも、そんなの分かったら、FXでぼろ儲けしてるはずだわなー

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