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桜の森の満開の下には

満開の桜 暮らし・生活
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 桜の樹の下には、ぶるーしーとが敷きつめられている!

 桜の花が咲くと人々は酒をぶらさげたり団子をたべて花の下を歩いて絶景だの春ランマンだのと浮かれて陽気になりますが、これは嘘です。なぜ嘘かと申しますと、真っ青なシートと真っ赤な三角コーンを桜の下に並べ詰めても誰も何も気にせず、人々はただ飲んで騒ぐことだけに関心があるからであります。人々は桜の花の美しさなど気にも留めません。せっかくの満開の桜景色を「ぶるーしーと」と「さんかくこーん」で汚し、桜並木の美しさを台無しにしても憤る人などいません。日本人は、生まれつき美的感覚が欠落しているのです。これは信じていいことだ。

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 どっちが死体が出てきて、どっちが鬼が出てくるのかよくごっちゃになるので、いっその事まとめてみた。しかし、残念ながら、へーせいにっぽんでは、死体も鬼も出てくることはなく、出てくるのは「ぶるーしーと」と「さんかくこーん」だが。

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 今年も桜の季節を迎えた。週末は雨だが、週の中ごろには晴れて、桜も満開を迎えるだろう。街中を歩いていても、桜の花の眺めにふと足が止まる。街路で一斉に咲きだす桜を見ると、普段あまり気付かないが、こんなにも桜が植えられていたのかと驚かされる。

 桜は歩いて眺めるに限る──そう思う。桜の花だけを見るのではなく、花びらが舞う通りの景色や、桜並木がつくり出す花と街路とが一体となった風景の美しさは、歩いてこそ実感できるものだ。

 場所取りをして座って眺める桜では、その美しさの半分も伝わってこない。だから私は、場所取りが禁止されている場所を歩いて回ることにしている。結局のところ、私は「桜の眺め」が好きなのであって、いわゆる「お花見」が好きなわけではないのだ。

 しかし、都内でそうした通りの美しさを楽しめる場所は、驚くほど少ない。桜の名所とされる場所は数多くあるものの、私が好きなのは、新宿御苑と千鳥ヶ淵である。純粋に桜の美しさを味わえる、数少ない場所だ。

 その一方で、他の名所と呼ばれる場所にはどうしても馴染めない。場所取りに血眼になる人々、酒を飲んで騒ぐだけの人々、あちこちに積まれるゴミ──そして何より、桜の下に敷き詰められたブルーシート! さらに、それに拍車をかけるように、やたらと目につく三角コーン! そうしたすべてのものが人々の目には入っていないようだ。

 桜の下に平然とブルーシートを広げる日本人が、「日本人は桜を愛しています」「桜は日本の象徴です」などと、得意げに語るのだから呆れる。外国人観光客を花見に連れて行き、自慢げに振る舞う姿にも情けなくなる。日本人が桜の美しさなどまるで気にも留めていない証拠が、まさにそのブルーシートと三角コーンなのだから!

 桜の森の満開の下には──そう、「ブルーシート」が敷き詰められ、「三角コーン」が並べられている。そして、それを誰も気にも留めない……。そう、それが今の日本の美意識なのです。日本の誇る桜の美しさなのです。

ブルーシート

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