拡声機を使った営業が当たり前の光景
廃品回収車、竿竹屋、灯油の巡回販売、焼き芋屋——。
住宅街の中を拡声機を積んだトラックやワゴン車が、徐行しながら巡回する光景は、日本ではごく日常的なものだ。
しかし、なぜこのように拡声機を用いた騒々しい営業活動が——住宅地においてすら——当然のように許されているのか。私が暮らす地域でも頻繁にこうした営業車がやってくるが、そのたびに違和感を覚える。
「これは本当に許されている行為なのか?」
まったく理解不能なので、東京都の条例を調べてみた。
東京都の騒音規制の仕組み
騒音に係る環境基準
東京都は国の「騒音規制法」に準じて、「騒音に係る環境基準」を目的別用途地域ごとに定めている。住宅地域では昼間55dB、商業地域・工業地域では60dBが基準とされている。
拡声機営業の“除外”
ところが、この環境基準には明確な抜け道が存在している。東京都の環境確保条例では、移動式や一時的な営業活動に使用される拡声機について、規制の対象から除外しているのだ。
とりわけ問題なのは、低層住宅地域であっても「自動車で移動しながらの拡声機使用」であれば規制を適用しないという点である。つまり、車で移動していれば騒音を出しても構わないという論理が条例で容認されていることになる。
この規定は、住宅地での静けさを守るという騒音規制の本来の目的を根本から覆す内容である。
「遵守事項」は実効性あるのか?
定められたルールの内容
移動式の拡声機営業では、以下のようなルールが順守事項として定められている。
- 使用禁止時間帯:午後7時から翌朝8時まで
- 1回10分以内、使用後15分以上の休止
- 道幅が4 m未満の道路では使用不可
- 学校・病院敷地から30 m以内では使用不可
- 地域別に定められた音量基準(10 m地点で55~60 dB)
実際には守られていない現状
しかし、現場ではほとんどの業者がこれらを無視して営業を行い、規制値を超えた音量や使用時間、禁止区域での巡回が常態化している。
音量を正確に測定し、現行業者を取り締まるのは現実的に困難であり、罰則も未整備なため、遵守義務はほぼ形骸化している。
行政・議会はなぜ対応しないのか?
行政の責任放棄
行政には、住民の生活環境を守る責任がありますが、現実には企業活動に配慮して指導を控える傾向が強い。
住民の声よりも企業の都合を優先することで、公共性を軽視した判断がまかり通っている。その背景には、戦後日本が経済成長を至上の価値とし、地域的・公共的価値を軽視してきた歴史がある。
議会の構造的要因
議会では、企業や団体票に依存する議員が多く、企業を規制・監視しにくい風土がある。公共の利益よりも経済的利益が優先される結果、条例の改正や強化が後回しにされ、問題が見送られ続けている。
市民が取るべき行動
行政も議会も、市民の声がなければ動かない。そして、現状を変えるためには、まず「おかしい」と思う感覚を持ち、それを行動につなげることが重要である。
具体的な方法は多岐にわたる。
- 市区町村に意見を送る
- 地元議員にメールや電話で問い合わせる
- ブログやSNSで実態を発信する
- オンライン署名を立ち上げる・賛同する
これらの小さな行動が積み重なれば、やがて大きな変化へとつながっていくはずである。
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