雇用に依存しない「国民共通の保障」への転換
日本の社会保障制度には、雇用形態による深刻な格差が存在する。
正社員、非正規労働者、自営業者、フリーランス──同じ社会に生き、同じ税を負担していても、受けられる医療・年金・失業保障は大きく異なる。
例えば、正社員は厚生年金・健康保険・雇用保険に包括的に加入できる一方、短時間の非正規労働者やフリーランスは加入要件から排除され、国民年金・国民健康保険という給付水準の低い制度にとどまることが多い。
この差は能力や努力の違いではなく、制度設計そのものが生み出している格差である。
社会保障は本来、「雇用の有無」や「企業への所属」によって選別されるものではない。
すべての人に等しく最低限の生活の安心を提供する──その理念に照らせば、現行制度は明らかに矛盾を抱えている。
社会保障を「国が一元的に運営する」
この問題への解決策は明確である。
社会保障制度を、企業単位ではなく、国が一元的に運営する体制へと転換することである。
現在の日本の社会保障は、戦後の長期雇用モデルを前提に、
- 企業が被保険者を管理し
- 保険料を労使折半で負担し
- 雇用関係を通じて保障を提供する
という「企業中心型」の仕組みで構築されてきた。
しかしこの構造は、
- 非正規雇用
- 雇用の短期化・流動化
- 副業・複業
- フリーランスの増加
といった現代の労働実態と根本的に噛み合っていない。
結果として、企業に属さない、あるいは弱く属する人々が制度から排除される構造が固定化している。
国が社会保障を一元的に運営すれば、
「どこで働くか」「どんな形で働くか」に関係なく、
個人を単位として等しく保障する制度へと転換できる。
一元化によって実現できる具体的効果
1.社会保険格差の解消
雇用形態を問わず、すべての人が同一条件で
- 医療
- 年金
- 介護
- 失業・就労支援
といった社会保障にアクセスできるようになる。
これは「同一労働同一賃金」よりも根本的な、同一国民同一保障の実現である。
2.行政コストと事務負担の削減
現在は、企業ごとに社会保険の加入・喪失・算定・申請が発生し、
企業・行政双方に大きな事務コストを生んでいる。
国による一元管理により、
- 個人単位での自動管理
- 申請手続きの大幅削減
- 重複行政の解消
が可能となり、制度運営の効率性は大きく向上する。
3.フリーランス・自営業者の保障強化
現行制度では、個人事業主やフリーランスは国民健康保険・国民年金といった不利な制度に偏っている。
一元化によって、彼らにも会社員と同様の保障を提供することが可能となり、
起業・独立・創業のリスクが社会全体で分担される。
4.労働移動の自由と経済の活性化
転職や副業をするたびに社会保険の手続きを変更する必要がなくなり、労働市場の流動性が高まる。
保障が個人に紐づけば、
「保障があるから安心して働き方を選べる」社会が実現する。
雇用の柔軟性と労働市場の流動化が進めば、経済の活性化と効率化に寄与するようになる。
具体的な制度設計案
- 全国民共通の社会保障口座を創設
→ 雇用先に依存せず、個人単位で保障を管理 - 保険料は所得比例で徴収
→ 被用者・自営業者・フリーランスを問わず公平負担 - 企業負担分は法人税に一本化
→ 雇用形態による負担差を解消 - 年金・医療・介護・雇用保険を統合し、
「社会保障庁(仮称)」が一元運営 - マイナンバー・AI・デジタル庁と連携し、
所得・就労状況を正確に把握し給付に反映
想定される懸念への整理された反論
「企業負担が軽くなりすぎるのでは?」
→ 負担を法人税に組み込み、利益規模に応じた負担とすることで、むしろ公平性は高まる。
「フリーライダーが増えるのでは?」
→ 所得捕捉を厳格化し、全員に応分の負担を求めれば、ただ乗りは制度的に防止できる。
「既存制度との整合性は?」
→ 移行期間を設け、世代間・制度間の調整を段階的に行うことで、混乱は最小限に抑えられる。
社会保障を「ベーシック・インフラ」へ
電気・水道・道路が全国民に等しく提供されるように、
社会保障もまた、生きるための基礎インフラである。
企業に依存せず、
雇用形態に左右されず、
人生の変化に耐えられる制度を、
国が責任をもって運営する。
それは特別な理想論ではなく、
分断が進む社会を持続可能に保つための現実的改革である。
結論:分断のない社会へ
社会保障は、国民の命と尊厳を守る最後の砦である。
その制度が人々を分断しているなら、
問われるべきは個人ではなく制度そのものだ。
国による社会保障の一元化は、
「誰もが安心して生きられる社会」への第一歩である。
企業に依存しない、雇用形態に左右されない、「生きることそのものを支える制度」を国が責任をもって運営する──それこそが、持続可能な社会保障のあるべき姿だろう。



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