売上減少と赤字転落
ベネッセホールディングスの2016年4~6月期連結決算は、売上高が前年同期比2%減の1,056億円。営業損益は7億1,800万円の赤字(前年同期は6億2,300万円の黒字)、最終損益は29億6,500万円の赤字(同4億1,900万円の赤字)となり、上場以来初の4~6月期営業赤字に陥った。
主力教育事業の落ち込み
看板商品である「進研ゼミ」「こどもちゃれんじ」などの国内教育事業は、売上高が514億円(前年同期比4%減)、営業赤字が17億4,200万円で、前年1億6,400万円の赤字から大きく拡大。特に小学生講座の売上は15%減の125億円と深刻で、会員数も前年比11%(86万人)減の702万人に落ち込んだ。
海外事業の失速
英会話教室「ベルリッツ」を運営するベネッセUSAも不振。売上は20%減の116億円、営業赤字は2億9,200万円(前年同期は7億7,100万円の黒字)と、大幅な業績悪化が見られる。
介護・保育で下支えするも限界
介護・保育事業は堅調で、売上は11%増の246億円、営業利益は15億円(前年同期比2.4倍)と伸びたが、主力事業の赤字を補うには至らない。
信頼失墜の背景:個人情報漏洩事件の余波
ベネッセは2014年、2,070万件もの個人情報漏洩事件を起こした。この事件では、単なる情報管理の甘さだけでなく、同社が名簿業者を利用し、個人情報を収集していた疑惑も浮上。これにより、企業への不信感が高まり、会員離れを加速させたと見られている。
DM商法への逆戻りと批判
ベネッセは業績不振の打開策として、再びダイレクトメール(DM)による勧誘に回帰する姿勢を見せているが、これは「時代に逆行している」と強く批判されている。
DMは、かつて同社が大量の個人情報を元に送付していた広告手法であり、その正確なターゲティングから逆に個人情報収集の不信感を強める一因にもなった。現代では、プライバシーへの配慮が重視されており、個人情報流出企業が再びDM戦略を取ることに対する社会的反発は大きい。
対面営業で成果を出す中国市場との対比
一方、中国では小学生講座が店舗での契約により売上を伸ばしている。これは、顧客との信頼関係を重視した「対面営業」の成果であり、ベネッセが国内でも採用すべき戦略として注目される。
必要なのは「信頼の回復」
少子化や情報漏洩だけでなく、ベネッセの根本的な問題は、顧客からの信頼の喪失にある。安易にDMに頼るのではなく、時代に即した透明性と信頼性を基盤としたビジネスモデルへの転換が求められている。
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