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人手不足倒産は危機ではない ― 市場が進める産業再編

労働・就職
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労働力希少化時代──
 少子高齢化が進み、外国人労働者が増加する時代の労働のあり方を問う 第2回

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人手不足倒産は経済的に正しい?!

1. 現状認識:人手不足倒産は増加している

日本では少子高齢化が急速に進み、労働供給が構造的に減少している。
総務省「労働力調査」によれば、生産年齢人口(15~64歳)は1995年の約8,716万人をピークに減少を続け、2023年には約7,400万人台まで縮小した。

こうした中、「人手不足倒産」が増加している。
東京商工リサーチの調査では、2023年の人手不足関連倒産は260件超と過去最多水準となり、特に建設業・運輸業・介護分野で顕著だった。

重要なのは、この倒産が「需要不足」ではなく「労働供給制約」によって発生している点である。

2. 論点整理:倒産には二つのタイプがある

(1)需要不足型倒産

  • 消費や投資が冷え込み売上が確保できない
  • マクロ経済の総需要不足が原因
  • 政府の財政政策や金融緩和が正当化される

これは典型的な景気後退局面で見られる現象である。

(2)供給制約型倒産

  • 受注や需要は存在する
  • しかし生産力(設備・資材・労働力等)を確保できないため供給できない
  • 生産性の向上に対応できない企業が退出する

現在、顕著に見られる「人手不足倒産」は、典型的な供給制約型倒産である。
有効求人倍率は2023年平均で約1.3倍前後と、長期的にみても高水準で推移している。
つまり、労働市場は逼迫しており、「仕事はあるが人がいない」状態である。

この場合、倒産の原因は景気後退(需要不足)ではなく、賃金調整や労働環境改善を通じた人材確保に失敗した経営判断にある。

3. 市場メカニズムの観点:淘汰は非効率の是正

労働需給が逼迫すれば、本来は次の調整が起こる。

  1. 賃金上昇
  2. 価格転嫁
  3. 生産性向上投資
  4. 労働節約型技術の導入

これらに成功した企業は存続する。
対応できない企業は退出する。

これは経済学でいう資源配分の再最適化であり、長期的には全体の生産性を高める方向に働く。

実際、企業物価指数は上昇傾向にあり、価格転嫁が進む企業と進まない企業の間で業績格差が拡大している。
つまり、人手不足倒産は「景気悪化」ではなく、「経営能力差の顕在化」と捉えることができる。

4. 外国人労働者受け入れの位置づけ

外国人労働者数は増加している。
厚生労働省の公表によれば、2025年10月時点で外国人労働者は約257万人超と過去最多である。

しかし、論点は「数」ではなく「調整メカニズムへの影響」である。

低賃金労働力が供給されると、

  • 賃金上昇圧力が弱まる
  • 価格転嫁のインセンティブが減少する
  • 生産性向上投資が遅れる

可能性がある。

特に単純労働分野で外国人労働力に依存することは、
本来起こるべき「賃金上昇を通じた産業構造転換」を先送りするリスクを伴う。

つまり、外国人受け入れは短期的には供給制約を緩和(延命措置)するが、
長期的には構造調整を遅らせ、生産性の向上と日本の国際競争力を弱体化させる要因になる。

政府は介入すべきか

需要不足型の倒産であれば、政府介入は合理的である。政府の主要な役割の一つは、有効需要を創出し、総需要不足を補うことにあるからだ。
しかし、人手不足による倒産は供給制約型である。市場には十分な需要が存在しており、問題は需要の不足ではなく、労働力という生産要素を確保できない点にある。

需要が存在する以上、

  • 適正賃金を提示できる企業
  • コストを価格転嫁できる企業
  • 生産性向上に投資できる企業

が市場に残る。

市場メカニズムに委ねれば、労働資源はより生産性の高い企業へ移動する。

したがって、政府介入による一律の救済や景気刺激策は経済学的に全く合理性を欠いている
むしろ重要なのは、

  • 円滑な労働移動の促進
  • リスキリング支援
  • 生産性投資への制度整備

といった「移行支援」である。

結論

人手不足倒産は一見すると経済の危機に見える。
しかし実態は、

  • 需要は存在する
  • 労働供給が制約されている
  • 経営の合理性が問われている

という構造変化である。

企業の退出は短期的には雇用や地域経済に痛みを伴う。しかしそれは、少子高齢化によって労働力が希少化する社会において、限られた資源をより生産性の高い企業へ移す資源再配分の過程でもある。長期的に見れば、この選別は生産性の向上と賃金水準の正常化を通じて、経済の持続可能性を高める方向に作用する。

日本経済は過去30年間、低成長が続いてきた。時間当たり労働生産性は主要先進国と比較して伸び悩み、実質賃金も長期的に停滞してきた。企業は価格転嫁よりもコスト削減を優先し、その結果として賃金抑制や労働環境の悪化が常態化した。

日本の労働生産性の低迷は、輸出産業の国際競争力を徐々に弱体化させてきた。付加価値を十分に高められないままでは、海外市場で価格競争に陥りやすく、外貨を稼ぐ力も低下する。

その帰結の一つが、通貨安の進行である。円安は輸入物価を押し上げ、エネルギーや原材料価格の上昇を通じて企業コストを増大させる。現在の物価上昇は、こうした輸入価格の上昇に起因するコストプッシュ型インフレの性格を強く持っている。

現在生じている供給力不足は、こうした低生産性構造から脱却するための転換点である。労働が不足しているからこそ、

  • 賃金引き上げ
  • 価格転嫁の徹底
  • 生産性向上投資
  • 省力化・自動化の推進

が不可避になる。

もしここで、安易な外国人労働者の拡大や過度な財政支援や金融緩和によって低生産性企業を延命させれば、本来進むべき構造転換は再び先送りされる可能性が高い。

したがって、人手不足倒産は「異常事態」ではない。
それは、構造転換期において市場が機能していることを示す正常な調整作用と位置づけることができる。

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