「解雇しやすい社会」にすれば正社員は増える
真の意味での雇用の安定をどう考えるべきか日本型正社員の2大特徴は、①一度雇ったらなかなか解雇できない解雇権濫用法理と、②一度上げた賃金はなかなか下げられないという不利益変更法理です。これらのルールは、元から法律で定められていたのではありません。昭和の時代の最高裁判決から生まれたルール(判例法理)です。当時の時代背景を考えてみると、人口は増加し、経済も右肩上がり。まさに高度経済成長期でした。
経済環境の変化に応じた機動的な労働力の移動ができず、労働法が時代とミスマッチとなった結果、雇用が滞留・固定化し、前回述べた非正規の「貧困」や、際限なき長時間労働、メンタルヘルス、ハラスメント、ブラック企業の出現など、さまざまな「ひずみ」を生んでいるのです。一部の正社員だけが特権を受け、非正規・若年層が割を食らうというのは、まさにいびつな構造です。
具体的には、正社員の雇用調整をする際に十分な補償金や再就職支援措置、キャリアコンサルティングなどを行うと共に、失業保険や実務に即した職業訓練などの公的給付の拡充により、この保護は十分に図れるでしょう。
また、企業が雇用調整の際に支払う補償金について、たとえば「給料の10カ月分」と高額にすれば、経済合理性の観点から安易な解雇はむしろ避けられるようになると考えられます。解雇紛争については、今は労働審判という裁判所の手続において「給料の◯カ月分」という形で和解をすることが多くおこなわれています。しかし、これを裁判ではなく、誰でも、労働者が申請すればもらえるようにすることのほうが、はるかに合理的でしょう。
現に、解雇規制が日本同様に厳しく、雇用が硬直化していたイタリアでは、今年の1月から解雇法制を改革し、最大24カ月分の金銭補償による解雇を認める法制度となりました。その結果、正社員が増えつつある最中だそうです。経済改革には、雇用法制の改革が必要不可欠なのです。
厳しすぎる解雇要件
「正社員の解雇要件が厳しすぎることが、非正規雇用の拡大をもたらし、格差を広げている―――」
(=´・ω・) : これって、この数年、広く指摘されるようになったけど、一向に改まる気配がないね。
(* `・д・) : でも、正社員の解雇要件を緩和したら、失業者が増えて、余計に経済が悪くなるんじゃない?
(=´・ω・) : そういう見方もあるけど、長期的な産業政策って観点から考えたら、やっぱり必要なことだよ。
それは、今の日本の経済状況考えてみれば分かることだよ。
特に、日本の国際競争力の落ち込みは、酷いからね。。。
産業の硬直化
(* `・д・) : 日本の貿易ってそんなに悪いの?
(=´・ω・) : 日本の貿易収支は、2011年から2015年まで赤字基調を続けてるよ。
貿易収支の赤字は、主に二つの要因で起こるんだけど、一つは、日本の景気が過熱して、需要が国内だけで賄いきれないために起きる場合。二つ目は、輸出が不振の場合。今の赤字基調は、後者だね。単純に輸出の不振で起きてるんだよ。
中国や韓国企業の台頭によって、今まで日本経済を牽引していた製造業が軒並み国際市場での競争力を失ったことが最も大きい原因かな。
(* `・д・) : なんで、日本の競争力は、ここまで落ちちゃったのかねぇ。
(=´・ω・) : それは、「今までの金融政策がよくないから」っていうのがリフレ派の主張だったんだよ。
日本以外の国はみんな金融緩和を実施してインフレ目標を実施しているときに、金融緩和を行わないと円高ばっかり進行して、日本の輸出業に悪影響が出るって言われてた。
んで、今、他の国と同様にインフレ目標導入して、リフレ派の主張に沿ってアベノミクスが始まった。
以来、3年間、金融緩和を実施したんだけど、いまだに何の効果も現れない。
やっぱり、金融政策以外にも、構造的な問題があったってことだよ。
産業構造や労働環境に問題があるまま、金融緩和だけ続けても経済は回らないよ。
(* `・д・) : お金だけ、ジャブジャブあっても、正しい使い道がなければ、意味ないもんね。
(=´・ω・) : そう。だから、産業構造が硬直化して、日本が国際市場の変化と産業構造の転換に明らかに対応できていないってことが一番問題。
日本は今、新たな成長分野を見出せないでいるんだよ。変化に弱い日本経済っていう日本の問題点が、この数年の間で、はっきりと浮き彫りになったんじゃないかな。
非正規雇用の本当の問題点
(* `・д・) : う~ん、じゃ、どうすればいいんだろ?
(=´・ω・) : まずは、産業の硬直化をもたらしている原因をはっきり認識することだと思う。
その最大の要因が、正社員の厳しすぎる解雇要件なんじゃない?
正社員の解雇が厳しく、労働市場の流動化が進まないことは、適材適所に人材を再配備することを阻害してるんだよ。人材の有効活用も進まないから、労働生産性の向上も図られない。新たな産業に人材が流れることもない。
その結果が、やたらと低い日本の一人当たりGDPに表れてる。こうしたことが、回りまわって、新しい産業が生まれず、経済が停滞する要因になってると思うよ。
これが、産業の硬直化と呼ばれるものだよ。
(* `・д・) : 確かに、日本の会社員って、新卒で入社したら、ずっと転職しないって感じだね。
(=´・ω・) : そう。
日本の雇用慣行や労働環境は、旧態依然で高度経済成長期の形態をいまだに続けてるからね。終身雇用や年功序列、新卒一括採用、みーんな硬直的な労働市場を作る原因だね。
さらに、正社員は、保護され過ぎてて、流動化が進まない。非正規雇用者は、労働市場で不当な評価しかされてなくて、技術や経験が身に付かないから、単純労働しか選択肢がなくて、これも流動性が低くなる。
正規・非正規両方とも流動性の低い労働市場が出来上がっちゃってる。
(* `・д・) : そっかー。
正社員への過剰な保護は、格差社会を助長する要因だよね。でも、それ以上に人材の流動化を妨げ、産業の進展を阻害し、経済を停滞させてるってわけかー。
(=´・ω・) : 正社員の解雇要件を緩和すると同時に、同一労働同一賃金を徹底して、正規・非正規の壁自体を解消していくことが重要だね。
今の日本は、正社員が保護されて、非正規雇用が増えるっていう、どーしょうもないぐらい流動性の低い社会になってる。でも、流動性の極めて低い労働市場の問題は、実は、そのまま市場の変化に対応できない産業構造の硬直化の問題でもあるんだよ。
こーいった認識の下で、今の労働問題を考えるべきだよ。
(* `・д・) : まるで動脈硬化を起こして破裂寸前の硬直した血管のようなもんかな。
(=´・ω・) : そう(笑)。
だから、政府と日銀がどれほど金融緩和を行っても、産業や労働のあり方が変わらないから、新しい成長が見込める投資先が出てこない。単に、余剰資金が株価式市場に流れて、株価のバブルをもたらしているだけだよ。
その結果が、アベノミクス3年目にして、なお、2%のインフレ目標を一切達成できていないという事態を生んでるんだよ。
アベノミクスを成功させるための労働市場の流動化
(* `・д・) : 政府と日銀は今も、どんどん異次元の金融緩和を進めてるよね。
(=´・ω・) : うん。だけど、労働市場のあり方に根本的なメスを入れなけりゃ、アベノミクスによる金融緩和は、単なる株価のバブルとして終わると思うけどな。今でも、インフレ目標を達成できていないんだし。
新たな成長分野の発展なしには、経済の回復はありえないよ。そのための労働市場の流動化なんだよ。
(* `・д・) : 政府はまず、非正規雇用の問題を、単に労働問題、あるいは労働市場の問題として、狭い視野で見るんじゃなくて、産業構造の問題として捉え直すべきってことね。そして、労働市場の問題を解決した上で、はじめて、金融緩和が意味を持つってことかな。
(=´・ω・) : そう。でないと、安定的な成長は見込めない。
長期的な成長戦略がないままの金融緩和は、いずれバブルとなってはじけるから。
そうなったら、また自分の含み損がえらいことになる。
(* `・д・) : おい!
また、自分の株価の心配かいっ!