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社会保障格差とは何か──雇用形態によって分断される「生活の安全網」

暮らし・生活
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社会保障格差を考える──
 国の一元管理へ向けて(全4回)第1回

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雇用形態で分断される日本の社会保障制度

日本の社会保障制度は、本来、すべての国民が病気・失業・老後といった人生上のリスクに直面した際、等しく最低限の生活を保障されることを目的として構築されてきた。
社会全体でリスクを分かち合う──それが社会保障の根本理念である。

しかし現実の日本では、雇用形態の違いが、そのまま社会保障の格差につながる構造が固定化している。正規雇用か非正規雇用かによって、加入できる制度、受け取れる給付、将来の保障水準に大きな差が生じている。

正社員だけが「制度の内側」にいる現実

日本の社会保障制度は、本来すべての国民が「等しく守られる」ことを目的として整備されてきた。しかし、その根幹を成す社会保険制度は、高度経済成長期の「正規雇用・男性世帯主」を中心としたモデルから脱却できていない。その結果、現代の多様な働き方に対し、制度が深刻な不公平を生み出している。

日本の主要な社会保険制度──厚生年金、健康保険、雇用保険、労災保険──は、制度設計上、基本的に正規雇用を前提に設計されている。

正社員の場合、

  • 厚生年金・健康保険に原則として加入でき
  • 保険料の約半分を企業が負担し
  • 将来の年金受給額も国民年金のみの場合より大きくなる

一方、パート・アルバイト・契約社員・派遣社員などの非正規雇用者は、

  • 労働時間や雇用期間の要件を満たさなければ社会保険に加入できず
  • 国民年金・国民健康保険に「個人負担100%」で加入するか
  • あるいは短時間就労ゆえに雇用保険の対象外となるケースも多い

例えば、同じ職場で同様の業務を行っていても、

  • 正社員は失業時に失業給付を受け取れるが
  • 非正規雇用者は加入要件を満たさず無収入になる

といった差が生じる。
これは能力や努力の差ではなく、制度上あらかじめ組み込まれた不公平である。

社会保障が「企業任せ」になっている構造的問題

現在の日本では、社会保険の適用範囲や福利厚生の多くが、企業単位の雇用管理に委ねられている。
その結果、

  • 同じ国民でありながら
  • どの企業に属するか
  • どの雇用形態で雇われるか

によって、生活保障の水準が大きく左右されてしまう。

これは、本来の社会保障の理念──
「国家が責任をもって国民の生活を保障する」
という考え方から明確に逸脱している。

社会保障が「企業の福利厚生」に近い性格を帯びてしまったことで、
雇用の不安定化がそのまま生活不安・老後不安へと直結する構造が生まれている。社会保障は企業の裁量事項ではない。

「働き方改革」の陰で拡大する分断

政府は「働き方改革」や「同一労働同一賃金」を掲げてきたが、
現場レベルでは、雇用の非正規化と保障の薄さが同時に進行している。

非正規雇用者はすでに労働者全体の約4割を占め、
その多くが、

  • 社会保険に十分に加入できず
  • 年金受給額が最低水準にとどまり
  • 病気や失業に対する備えが乏しい

という状態に置かれている。

賃金格差に加え、社会保障格差が将来不安を固定化し、貧困の再生産を招いている点こそが、最も深刻な問題である。

社会保障に「選別」があってはならない

本来、社会保障は国家が国民の生存権(憲法25条)を担保するための仕組みだ。しかし現状、保障の質は「どの企業に、どのような形態で雇われるか」という企業の判断や雇用契約に依存してしまっている。 これは、社会保障の責任主体が「国」から「企業」へと実質的に転嫁されている状態であり、国家による保障の普遍性を著しく損なっていると言える。

社会保障は、
「努力した人への報酬」ではなく、
「生きるための最低限の安心」を無条件で支える制度である。

にもかかわらず、

  • 企業
  • 雇用形態
  • 働き方・労働時間

といった要素によって保障の有無や水準が左右される現行制度は、社会保障の本質と矛盾している。

必要なのは、
「どこで、どのように働くか」ではなく、
「日本に生きているかどうか」を基準に保障される制度である。

問題提起の整理

  • 現行の社会保障制度は、正規雇用を前提に設計されており、非正規雇用者に構造的に不利
  • 社会保障の有無が企業や雇用形態に依存するのは、制度理念として誤っている
  • 国が責任主体となり、雇用形態にかかわらず等しく保障する制度改革が不可欠

「本来、社会保障とは何のためにあるのか」
この問いを正面から問い直すことが、いま強く求められている。

項目現行制度の課題目指すべき方向
設計思想昭和の「正規雇用モデル」に固執多様な働き方を前提とした「個人単位」の保障
格差の要因厚生年金・社会保険の加入障壁雇用形態に関わらず全ての労働者に適用
責任の所在企業の福利厚生の一部と化している国が直接的に生活の安全網を保障する

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