2011年3月11日、14時46分――
東北の三陸沖を震源として、マグニチュード9.0の大地震が東日本を襲った。日本の観測史上最大規模のものだった。死者2万人、行方不明者3千人という甚大な人的被害をもたらした。
この地震による被害は、原発にも及んだ。地震発生直後から、揺れと津波の影響で、福島第一原発の一号機から三号機が緊急停止した。その際、非常用の炉心冷却装置が作動しなかった。非常用電源系の不作動だった。
原子炉が災害などで緊急停止した際は、炉心の冷却を続けるために冷却ポンプを作動させなければならないが、冷却ポンプを動かすための非常用ディーゼル発電機が津波よって故障したのだ。そのため、原子炉圧力容器内の水位が低下。一部の燃料棒が冷却水の水面上に露出し、炉心溶融(メルトダウン)した。
国際原子力事象評価尺度(INES)において、最高レベルの7(深刻な事故)という評価となり、チェルノブイリ原子力発電所事故に匹敵する、人類史上最も深刻な原子力事故となった。
福島第一原発事故 地震発生直後からの時系列
2011年3月11日
14時46分
三陸沖を震源とするマグニチュード9.0の大地震が発生。
運転中だった1~3号機が自動停止。
15時42分
1~3号機で交流電源が喪失。
16時36分
1号機と2号機で、緊急炉心冷却装置(ECCS)が停止。
圧力容器への注水不能。
21時23分
官邸が半径3キロ以内の住民に避難を指示。10キロ以内の住民は屋内待避。
3月12日
05時44分
避難指示の対象が半径10キロ圏内に拡大。
15時36分
1号機で爆発音をともなう水素爆発が発生。原子炉建屋の屋根や上部の壁面が崩壊。
18時25分
避難指示の対象が半径20キロ圏内に拡大。
3月13日
05時10分
3号機で、緊急炉心冷却装置(ECCS)が停止。
3月14日
11時01分
3号機で水素爆発。原子炉建屋の上部が損壊。
18時22分
2号機で冷却水の水位が低下し、燃料棒全体が水面上に露出。
3月15日
06時14分
4号機で爆発音。3号機からは煙が発生。
09時38分
4号機の原子炉建屋3階北西付近で火災。
10時22分
3号機付近で1時間当たり400ミリシーベルトの高い放射線量を観測。
3月16日
05時45分
4号機で再び火災。
08時37分
3号機から白煙が噴出。
3月17日
09時48分
自衛隊のヘリコプターが上空から3号機に放水を開始。
19時35分
自衛隊の消防車両1台が地上から3号機に放水を開始。
3月18日
10時22分
1号機と2号機で、電源復活させるための配電盤の設置完了。
17時50分
原子力安全・保安院が事故の規模について、米国スリーマイル島原発事故と並ぶ「レベル5」と暫定評価。
桜井淳『新版 原発のどこが危険か』朝日新聞出版 (2011) から引用