成功のために学ぶ具体的失敗例 – 畑村洋太郎『起業と倒産の失敗学』(2003)

読書案内

畑村洋太郎『起業と倒産の失敗学』(2003)

企業倒産の事例集

 成功に法則はないが、失敗には法則がある―――この言葉通り、企業が破綻した事例から失敗の要因を明らかにしようと試みた本。原著は2003年の刊行なので、2000年前後の破綻事例が紹介されている。

 企業破綻にもさまざまな類型があり、その要因もさまざまだが、本書はそのなかでも優良成長企業が急成長後に破綻した事例に焦点を当ていて、各章で一社ずつ紹介している。
 破綻に陥る企業はその要因はさまざまだが、どれも似たような過程をたどっており、失敗にはある程度の法則性が見られると著者は述べている。ただ、事例があくまで急成長後に破綻したものだけを取り上げていて、選択に若干、恣意的な部分も感じる。
 なので体系的な学問と呼ぶには、まだ無理があるが、それでも紹介されている事例はどれも非常に興味深いもので、参考になる。

失敗する経営者の共通点

 本書で紹介された事例を見ていくと、経営者が陥りやすい失敗というのは、需要に対して供給が追いつかないという局面で起こりやすいのだなというのを非常に強く感じた。
 せっかく需要が伸びて売り上げが急増しているときに、その需要に応えられないというのは経営者にとって一番あせりを感じるのかもしれない。せっかくの客を逃している、という機会損失へのあせりが経営者の冷静な判断を狂わせてしまう。ここにどうしても経営者の欲が出てしまうのだろう。需要の読みを誤って無謀な拡大をして、失敗する。

 やっぱり失敗から学べることは多い。前作の『失敗学の法則』は、失敗に関する知識を一般化しようとした著作だとすれば、今回はその応用編だ。前作ほど体系化されているわけではないが、事例集としては非常に良くまとめられていて分かりやすく、読んでいて非常に興味深い本だった。