フランスで躍進するマリーヌ・ル・ペンとは – 極右政党に揺れるフランス

マリーヌ・ル・ペンの支持者たち(2011)
(出典: Marine Le Pen – Wikipedia

躍進する国民戦線

 2015年1月に起きたイスラム過激派による週刊紙『シャルリー・エブド』の事務所への襲撃事件は、フランス国内のみならず、世界中に衝撃を与えた。この事件の影響を受けて、フランスでは移民反対を唱える極右政党の国民戦線(FN)が支持を広げている。
 2017年4月に行われる予定の大統領選挙では、党首であるマリーヌ・ル・ペンが勝利するのではないか、そういった憶測まで飛び出すようになった。この国民戦線を率いるマリーヌ・ル・ペンとは一体どのような人物なのか――

マリーヌ・ル・ペンとは

Marine Le Pen

(出典: Wikipedia

 父親は極右政党の国民戦線(FN)初代党首のジャン=マリー・ル・ペン。2011年父親の跡を継いで、2代目党首となる。
 父親の過激派の印象を払拭するため、マリーヌ・ル・ペンは穏健化路線を進めている。同性愛や妊娠中絶を支持し、人種差別的な発言は慎重に避けている。

 「女性」で「若い」党首ということも印象の回復に寄与していると言われる。マリーヌ・ル・ペン指揮の下で、国民戦線は大衆政党へと転換を図ろうとしている。

・パリ第2大学で、弁護士資格を取得
・1986年、FN入党、党の法務を担当
・2003年、FN副党首に就任
・2007年、父ジャン=マリー・ル・ペンの大統領選で選挙対策責任者を務める。この頃からメディアの露出が増え注目されるようになる。
・2011年、FN党首に選任される。
マリーヌ・ル・ペンの政策

 マリーヌ・ル・ペンの政策を一言で表すなら、「国家主権の回復」ということになる。

・EU離脱
・通貨フランの復活
・国境警備の強化
・移民の制限
・NATOの軍事部門からの撤退

 フランスはEU加盟の下、ヨーロッパ市場という自由で巨大な市場を手に入れたが、その一方で、通貨発行権、関税自主権、国境管理といった国家主権は制限されることになった。また、経済が自由化されたことで、激しい国際競争にも晒されることになった。
 国際競争に対応できなかった地方経済や中小企業が疲弊、失業率が高止まりしている現状に対して、一部国民の不満が高まり、これが、「反EU」「主権回復」を唱える極右政党への支持につながっている。

 経済自由化による格差の拡大、中間層の没落が、支持拡大の背景にあるため、経済政策や社会保障は、非常に保護主義的で左寄りの政策を掲げている。

・週労働時間35時間制の維持
・年金支給開始年齢の引き下げ
・防衛予算の引き下げ

 国家社会主義のような右翼政党が台頭するというのは、裏を返せば、社会党をはじめとした従来の左派政党が、グローバリズムの進展による格差の拡大に対応しきれていないということの表れでもある。
 左派政党による経済政策が、市場自由化の前に何の成果もあげられていないことから、「移民が職を奪っている」という歪んだ認知を国民の間に広げる結果となっている。

参考
マリーヌ・ルペン – コトバンク

過激派路線から脱却する国民戦線

父親のジャン=マリー・ル・ペン

 極右で過激派として知られた父親のジャン=マリー・ル・ペンは、国民戦線を立ち上げた初代党首。差別主義的な発言が多く、舌禍事件が絶えなかった。

 2002年の大統領選挙では、社会党のリオネル・ジョスパン首相を第一回投票で破り、決選投票まで残った。泡沫候補と見られていたル・ペンが上位2名で行われる決選投票まで残ったことは、フランス国内外に衝撃を与え、ル・ペン・ショックといわれた。

1位 ジャック・シラク 共和国連合(Rassemblement pour la République) 得票率19.88%
2位 ジャン=マリー・ルペン 国民戦線(Front national) 得票率16.86%
3位 リオネル・ジョスパン 社会党(Parti socialiste) 得票率16.18%

 極右政党の国民戦線が支持を伸ばしているとはいえ、反ル・ペンの国民世論は強く、多くの国民からはル・ペンは大統領としてはあまりにもふさわしくない人物として見られていた。
 2002年の大統領選は、社会党がシラク支持へと回り、シラクが圧勝する結果となった。

参考
2002年フランス大統領選挙 – Wikipedia

 2011年党首を退いた後も、差別発言が続き、舌禍事件が絶えなかった。過激政党からの脱却を図り、大衆政党を目指していた娘のマリーヌ・ル・ペンとの対立が深まり、2015年には党員資格を剥奪され、除名処分となった。

大衆政党化は成功するか?

 マリーヌ・ル・ペンは、国民戦線党首就任直後から、極右路線からの脱却を図っている。

・党員による人種差別、親ファシズム、反ユダヤ主義的発言を禁止
・避妊中絶を容認
・同性愛者の保護

 保守政党よりもリベラルな立場を取り始めている。このような彼女独自のリベラル路線も支持層の拡大に役立っているとみられる。

 今後、マリーヌ・ル・ペンによる大衆政党への転換が成功するかどうかはまだ未知数だ。
 しかし、極右政党が、保護主義的経済政策や社会保障の拡充を掲げて、リベラル的価値観を標榜し、支持を伸ばしているという事実は、従来の左派政党に対して国民がいかに失望しているかということを非常によく物語っているように思える。

 社会党が支持を回復するのか、国民戦線が大衆政党に成長するのか―――
 2017年4月に行われる大統領選挙は、その行方を占う大事な転換点になることは間違いないだろう。

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