【ウイグル人権問題】欧米企業と日本企業の対応差 – H&M、ナイキ、ユニクロ、無印は?

H&M、ナイキ、パタゴニア
– ウイグル人権問題に深く憂慮する欧米企業

 2020年3月、オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)が中国国内のウイグル族に対する人権侵害に関して報告書を公表した。世界的企業80社以上が、ウイグル族の強制労働が行われている中国の工場と取引があると指摘された。内14社は日本企業だった。

 この報告を受けて、指摘された欧米企業は迅速に反応した。2020年8月には、米アウトドア用品大手パタゴニアが、翌9月には、スウェーデン衣料品大手H&Mが、問題のある中国工場との取引を停止。

 さらに、ナイキ、アディダス、コンバース、バーバリー、カルバン・クライン、ニューバランス、ギャップ、ザラ、アンダーアーマー、トミー・ヒルフィガーなど世界的な大手アパレル企業が、新疆ウイグル自治区産の綿の使用を停止および禁止を発表した。

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強制労働によって作られているとされる「新疆綿」。これを使わないと約束したブランドに対するボイコットが相次いでいる。…

欧米各国の制裁発動と中国の反発

 2021年3月22日、欧州連合(EU)とイギリス、アメリカ、カナダが、新疆ウイグル自治区において少数民族のウイグル族が深刻な人権侵害を受けているとして、中国当局者へ共同で制裁を発動した。
 ウイグル自治区では、100万人以上のウイグル人が強制収容所に収監され、思想教育、強制労働、虐待、組織的な性的暴行、強制的不妊手術が常態化していると指摘。

 中国政府はこれら欧米各国の動きに対して、激しく反発。この制裁を機に、中国国内のSNSでは、欧米企業製品の不買を呼びかける運動が広がった。特に知名度が高く、中国国内での売上高の高いH&Mやナイキは、不買運動の恰好の標的とされた。

 H&Mは、3月25日の時点で、中国大手のECサイト、地図アプリなどから検索結果がすべて削除された。さらに、米ブルームバーグは、3月29日付の報道で、ウルムチ、銀川、長春、連雲港などにあるH&Mの少なくとも6店舗が建物の所有者によって営業を停止されたと伝えた。

一方、日本企業は。。。

 これら欧米企業とは、全く対照的な動きを見せたのが日本の企業だ。

 2020年11月、オーストラリア公共放送のABCが、無印良品とユニクロが「新疆綿」の名を付けた製品を販売していると報道した。

 無印良品を展開する良品計画は、新疆綿を使用していることは認めたが、新疆ウイグル自治区の工場への独自監査の結果、特に問題はなかったと声明を発表。無印良品は、「新疆綿」を使用した商品を販売しているが、2020年末までに、「新疆綿」の表示のみをウェブサイト上からすべて削除している。

 さらにユニクロは、指摘を受けた新疆綿使用の商品は2008年製造のもので、現在は新疆綿は使用していないと説明。13年前の2008年製造の商品が指摘されただけという、にわかには信じがたい声明を発表。そして、現在の綿の産地に関しては答えられないとした。

 2021年2月、日本の主要小売り、製造業12社が、中国新疆ウイグル自治区などでの少数民族ウイグル族に対する強制労働への関与が取引先の中国企業で確認された場合、取引を停止すると発表した。

 欧米主要企業が疑いのある中国企業との取引を相次いで停止する中、日本企業も対応が迫られていたが、ようやくにして方針を発表した。後手後手との印象はぬぐいようがない。さらに、この指針は、「人権侵害行為が確認された場合」という条件付きだ。
 東芝、ソニー、シャープ、日立製作所、TDKなど日本の大手企業は、中国の取引先企業に「強制労働の事実は確認されなかった」と独自調査の結果を公表。中国政府の見解そのままに、「人権侵害は確認されない」として、中国企業との取引を継続している。現在、中国との取引停止を表明した日本企業は1社もない。

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